研究課題/領域番号 |
09410120
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平石 貴樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10133323)
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研究分担者 |
HUYHES G.E. 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人教師 (10281700)
大橋 洋一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20126014)
高橋 和久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10108102)
富士川 義之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20083264)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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キーワード | 自然 / オリエンタリズム / ターナー / ラスキン / 神話 |
研究概要 |
本研究は十九世紀英米文学における「自然」の多様な表象を、単なる開発の対象やオリエンタリズム的思慕の対象を経て文明・産業主義批判の根拠として改めて座標原点化される概念に至るまで、想定される階梯のそれぞれにおいて検討し、その相互作用を闡明することを目的として進められた。例えばアメリカ文学においては、文明社会を逃れて自然を謳歌する象徴的ヒーローであったマークトウェインが、初期諸作品においては、ゴールドラッシュの一攫千金の夢にみずから囚われながら、それを揶揄的・批判的に観察するアンビヴァレントな書き物を残したり、またハワイとそこでの先住民の生活を見聞した折りには、一方でまったく産業主義的な、社会的有用の観点からその未開を嘆き、開発の余地を訴えながら、他方そうした社会的有用の観点に立って初めて、かれの得意とする、自然の中に寝そべるがごとき怠惰の楽しみを説き起こすことが可能になるという、アンビヴァレントかつ表裏一体の二重反応を記録していることが確かめられた。よってもってかれの後年の自然謳歌は、この種の二重対応のうち、当時自明だった産業主義のほうをカッコに入れて隠蔽することによって発生したらしいメカニズムが浮かび上がった。これを一般化して言えば、かれの自然讃歌も出発点においてはオリエンタリズム的差異化の思想と無縁ではないが、さりとてそれを極大化していくうちに、当の文明社会の根幹を打つ批判たりえもする以上、その意義を過小評価することは許されない、という思想的コングロマリットが「自然」をめぐる表象においてまさに形成されていた事態が認識され、これは共同研究者一同の公約数的な共通認識ともなった。研究代表者は以上トウェインに即した解明点を論文に発表した。各研究分担者もそれぞれの成果を論文に発表していることは別記の通りである。
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