研究課題/領域番号 |
09410125
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
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研究分担者 |
吉田 和彦 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90183699)
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キーワード | ヒッタイト語 / 粘土板 / ヒッタイト法律文書 / 歴史言語学 / 破擦化 / 母音交替 / 印欧祖語 / アナトリア祖語 |
研究概要 |
ヒッタイト語粘土版資料のなかでも、言語学的観点からみてもっとも重要なヒッタイト法律文書に対して、体系的な歴史言語学的分析を施すことが本研究の目的であった。すでに昨年度までに、ヒッタイト語の先史において、^*tのみならず^*dも、^*iと^*yの前で破擦化が起こったことを明らかにした。本年度はヒッタイト語のsiuatt-"day"が印欧祖語の時期に示していた母音交替のタイプを明らかにすることによって、この名詞にみられる音韻・形態に関する3つの問題を歴史的に説明した。まず、この名詞の初頭のs-の来源の問題がある。つぎに、この名詞は古期ヒッタイト語のオリジナルの粘土板に4例みられるが、この4例のうち3例は語根に-i-が重複されている(si-i-ua-at-)。さらに、このsiuatt-と同源である楔形文字ルウィ語と象形文字ルウィ語の形式は、それぞれ母音間でシングルの-t-とロタシズムを受けた-r-によって特徴づけられている。ヒッタイト語siuatt-にみられるこれらの3つの未解決な問題は、この名詞の祖形にamphikineticタイプの母音交替を再建し、後にレベリングの影響を受けたと考えられることによって自然に説明することができる。(^*dieu-ot-m/^*diu-t-es→Proto-Anatolian ^*dieu-ot-m/^*diu-ot-es→^*dieuod-/^*dieuot-')。まず、siuatt-の語頭のs-は^*di-から破擦化、語頭子音連続の簡略化それに語頭子音の無声化によって説明される。つぎに、古期ヒッタイト語のsi-i-ua-azなどにみられるscriptio plena-i-は、アクセントを持たない^*eを反映している。最後に、ヒッタイト語siuatt-の弱化していない-tt-に対する楔形文字ルウィ語tiuat-の弱化した-t-(<^*-d-)は、アナトリア祖語の時期に生じた弱化規則によるものである。ヒッタイト語と楔形文字ルウィ語は、それぞれの個々の歴史において、前者は^*-t-を持つ弱語幹を、後者は^*-d-を持つ強語幹をパラダイム全体に一般化したと考えられる。
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