研究課題/領域番号 |
09420003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小森田 秋夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30103906)
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研究分担者 |
竹森 正孝 東京都立短期大学, 教授 (90111062)
森下 敏男 神戸大学, 法学部, 教授 (90107920)
大江 泰一郎 静岡大学, 人文学部, 教授 (00097221)
上野 達彦 三重大学, 人文学部, 教授 (40115689)
上田 寛 立命館大学, 法学部, 教授 (90093195)
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キーワード | 人権 / ロシア法 / ソビエト法 / 社会主義法 / 比較憲法 / 法文化 / 体制転換 / ポスト社会 |
研究概要 |
1.各分担者が担当した個々の人権について各論的研究の結果をとりまとめた。とりあげることのできたのは、通信の秘密、住居の不可侵、良心の自由、思想・言論の自由、集会の権利、結社の自由、移動の自由、財産権、労働の自由、社会保障の権利、住宅に対する権利、環境権、子どもの権利、民族の権利、犯罪被害者の人権、参政権、裁判を受ける権利、国籍の権利である。 2.各論的研究をも踏まえて、ロシアの人権についての総論的検討を行った結果、次のような諸点が確認され、また今後の課題として明らかにされた。(1)93年憲法において、理論的・規範的にはソビエト時代の「市民基本的権利・義務」論から普遍主義的な「人権」観へ明確に転換したことが確認できる。そのうえで、そこに「ロシア的」なるものを読み取ることができるかどうかは、憲法規範レベルだけではなく、それを具体化する法令、人権状況、人権保障メカニズムの作動状況などの総体の分析を待たなければならない。(2)憲法制定過程を見ると、93年春までは、基本的な憲法構想をめぐる分岐を反映し、人権とくに社会権についてどのように規定するかをめぐる立場の相違が看取できるが、93年春以降の最終段階では人権はあまり大きな争点とはなっていない。この点は、比較法的視点を加味してよりいっそう厳密に検証する必要がある。(3)人権保障メカニズムについては、憲法訴願制度を伴う憲法裁判所制度が新設され比較的活発に活動していることが最大の変化である。しかし、通常裁判所は、財政難もあって大きな困難を抱えている。(4)現在のロシアにおいて、憲法規範と実態のあいだには少なからずズレがあるが、体制移行期の過渡的な問題が法文化的伝統に由来する構造的問題か、検討を深める必要がある。 3.本研究の成果は、『現代ロシア法』(仮題)という単行本として刊行する予定である。
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