研究課題/領域番号 |
09420011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中森 喜彦 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40025151)
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研究分担者 |
橋田 久 京都産業大学, 法学部, 専任講師 (10278434)
小田 直樹 広島大学, 法学部, 助教授 (10194557)
岩間 康夫 大阪学院大学, 法学部, 助教授 (30211767)
松宮 孝明 立命館大学, 法学部, 教授 (80199851)
松生 光正 姫路獨協大学, 法学部, 教授 (00199762)
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キーワード | 緊急避難 / 義務衝突 / 刑法37条 / 法確証 / 生命危険共同体 / 強要緊急避難 / 警察官の武器使用 |
研究概要 |
昨年度から引き続き、歴史的観点から緊急避難の正当化根拠に考察が加えられ、現在の刑法37条に挙げられている「害の均衡」要件が導入された過程において、緊急避難の本質につき、正当防衛とは異なって完全な「正当化」をもたらすものではないとの認識が見られた事実などが明らかにされた。 個別問題に関しては、警察官が武器を使用するに際しての緊急避難の成否につき、昨年度検討した警職法7条制定当時の議論を踏まえ、警察活動の基本原則に従って許容される武器使用は刑法35条により正当化され、緊急避難(刑法37条)はそこから二次的に人の生命・身体に危害が生じた場合に問題となるとの解釈が提案された。さらに、不作為義務と作為義務の衝突に関しては、昨年度取りあげたナチス安楽死事件と併せてわが国の判例にも分析を加え、この種の義務衝突は保全/侵害法益の比較を重視する刑法37条によっては適切に処理しきれず、独立の正当化事由として構想する必要があるとの結論が得られた。 本年度新たに考察したテーマは、いわゆる強要緊急避難と生命危険共同体である。前者については、被強要者は強要者とともに不法の側にあり、その行為を正当とみるのは法確証の原理に反するとして正当化を否定する立場が有力であるが、これを疑問として肯定説が支持された。答責性なく強要者の道具とされた者に法はその確証を要求できないことなどを理由とする。また、後者については、生命の量的比較を否定する立場を前提に、危険共同体の少数者を犠牲にすれば多数者が救助されるというだけではその違法性は阻却されないとしつつ、共同体に対する危険源となっている者に向けられた攻撃は例外的に緊急避難として正当化されうるとの見解が提示された。
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