研究課題
本年度は、各研究分担者の調査研究の成果を『日本政治学会年報 日本外交におけるアジア主義』にまとめて刊行した。北岡伸一・井上寿一・楠精一郎・大澤博明は、明治期から戦後までの外交史の分野を担当し、その結果、明治前期朝鮮政策のアジア主義的傾向の諸特徴や、戦後のアジア外交の形成過程などが、主に未刊行一次史料の分析によって、明らかになった。また坂本多加雄・溝部英章・山室信一・酒井哲哉・松田宏一郎が、思想史研究の立場から、アジア主義と日本外交との関係を考察し、征韓論の政治哲学や日本外交とアジア主義的言説との間における事実と論理のディレンマの意味、あるいは戦前の「東亜共同体論」から戦後の「近代化論」への転換過程、幕末維新期の思想家のアジア認識などに関して、新たな知見が得られた。以上の各研究分担者の研究過程において、研究会が設けられた。そして研究会における検討を通して、資料情報の共有化・高度化が図られ、あるいは近代以降戦後までの日本外交におけるアジア主義に関する理論的分析枠組みの共通化が促進された。本研究によって、今後のアジア諸国と日本との関係を考える際の新たな視座が獲得されたものと考えられる。
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