研究概要 |
本年度は、産業の情報のうち情報化投資の経済効果に焦点を当てて分析を行った。具体的には、通産省「情報処理実態調査」のデータを基礎にして情報化の進展度合いを示す指標として「情報装備率」を産業別に定義し、それと付加価値生産性との関係を成長会計の手法を用いて分析した。 分析結果として、産業別の付加価値生産性の成長率と、生産要素の貢献度合いを見ると「情報装備の貢献」の1990-94年度の値が、「繊維」「パルプ・紙」「窯業・土石製品」「一次金属・金属製品」「一般機械」「電気機械」「輸送機械」の7産業においてマイナスを記録しており、付加価値生産性の上昇には負の影響を与えていることがわかる。これらの産業では「情報装備分配率」がマイナスとなっているにもかかわらず、「情報装備」はプラスの成長を続けている。これは情報装備がうまく活用されない原因として、就業者が情報装備を使いこなすノウハウをもっていない、ノウハウはあるが情報装備が過剰である、などが考えられよう。 90年代に入っても「情報装備」が引き続き拡大する一方で、「情報装備の貢献」が付加価値生産性にさほど貢献していない、もしくは負の影響を及ぼしている産業が多いことは、必ずしも情報装備を経営に勝つようしきれていない企業が多いと解釈できる。このことは、国内企業が21世紀に向けた新たな経営に移行するための課題である。 なお、本年度の研究の暫定的な結果は廣松毅他「情報技術を付加価値生産性-成長会計を用いて、情報装備の効果に関する定量分析」(情報通信学会平成9年度年報,1998年3月,印刷中)として発表した。
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