研究課題/領域番号 |
09430003
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済統計学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣松 毅 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80012491)
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研究分担者 |
橋本 毅彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (90237941)
小林 稔 和光大学, 経済学部, 助教授 (50287926)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | 情報化投資 / 付加価値生産性 / 成長会計 / 情報装備ストック / 労働投入の削減 / DEA(Data Envelopment Analysis) / スラック(非効率性) / 生産フロンティア |
研究概要 |
本研究では、情報化投資の経済効果に焦点を当てて分析を行った。具体的に、通産省「情報処理実態調査」のデ一タを基礎にして情報化の進展度合いを示す指標として「情報装備率」を産業別に定義し、それと付加価値生産性との関係を成長会計の手法を用いて分析した。その結果、産業別の付加価値生産性の成長率と生産要素の貢献度合いを見ると、「特報装備の貢献」の1990-94年度の値が「繊維」「パルプ・紙」「窯業・土石製品」「一次金属・金属製品」「一般機械」「電気機械」「輸送機械」の7産業においてマイナスを記録しており、付加価値生産性の上昇には負の影響を与えていることが明らかになった。 さらに、情報システムの効果を労働投入の削減にしぼって、産業ごとに定量的に分析検討した。すなわち、情報システムに関する資本ストックを情報装備ストックと定義しDEA(Data Envelopment Analysis)によって情報装備ストックのスラックを検出した。その結果、スタックが生じているときには、限界代替率を上回る率で情報装備ストックが増加したり、情報装備ストックの増加にもかかわらず労働投入が減少していない現象が見られた。また、情報装備ストックの経済的効果をより精緻に分析検討し結果、1991〜94年において多くの産業で情報装備ストックの非効率性が計測された。特に、情報装備ストックのウェイトが相対的に高い「金融・保険業」では、1988〜89年の期間情報装備ストックは効率的であったが、いわゆるバブル経済の崩壊した91年以降は情報装備ストックの非効率が顕著となった。同時に、情報装備ストックの非効率性を生産フロンティアにより計測し、DEAによる分析結果と比較検討することで計測結果の信頼性の向上を目指した。生産フロンティアの推計では、決定的生産フロンティアの他、確率的生産フロンティアについても検討を進めた。ただし、生産フロンティアによる分析では、分析データや手法およびそこから得られる結果について不安定な要素が認められ、今後に課題を残した。 この他、米国において議論されている「情報技術と生産性の関係」について関連研究を調査検討し、本研究成果との比較検討を進めた。特にMITのDr.Eric brynjolfssonの研究に注目しその方法論と結果の検討を試みた。同研究では、1991年までに米国ではいわゆる「生産性のパラドックス」は消滅したとしている。しかし日本では、われわれの研究結果から、少なくとも94年までは「生者性のパラドックス」の存在が指摘できる。今後は、日米の情報化投資の内容を詳細に分析することで、日米の結果の差異について検討を進める必要がある。
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