近代日本地方都市の社会経済史的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09430016
• 研究機関: 明治学院大学
• 研究代表者: 大石 嘉一郎 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90012997)
• 研究分担者: 柳沢 遊 慶応大学, 経済学部, 助教授 (20174542) ; 金澤 史男 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (40161161) ; 土方 苑子 東京大学大学院, 教育学研究科, 教授 (50099909) ; 林 宥一 金沢大学, 経済学部, 教授 (50143871) ; 田中 重博 茨城大学, 人文学部, 教授 (40091863)
• キーワード: 地方都市 / 近代都市 / 新興工業都市 / 都市財政 / 都市的公共性 / 市政担当層 / 地域経済 / 植民地都市

研究概要

平成9年度は、計7回の定例研究会を開催し、また、金沢市(9月)、静岡市(2月)、水戸市(2月)において資料調査、現地研究者との研究交流を実施した。今年度は3年計画の初年度であり、(1)当該テーマの先行研究の整理、(2)研究分担者ごとに担当都市に関する資料の収集、整理を行ない、それを踏まえて主として以下の論点を検討した。
(1)(1)標準的地方都市(金沢、静岡、水戸)の近代都市への移行過程における都市経済基盤の問題を検討した。その際、在来諸産業の動向と近代産業の育成・定着との関連のあり方が重要な論点となる。(2)第一次大戦前後からの工業化の過程における新興工業都市(川崎)の場合には、在来諸産業と重化学工業の発展地域の差異、社会的連関の脆弱性が指摘できる。
(2)標準的地方都市の行財政の変化を、大都市や町村の行財政との比較を念頭に置きつつ、国家によって付与された拠点性との関連で分析した。各都市とも1920年代の都市化の過程で、都市的公共政策が強化されてくることが明らかになった。
(3)地方都市の市政担当層が、明治期から大正・昭和期にどのように変化するかを、上記(1)(2)の論点と関連させて考察した。そこでは、標準的地方都市の場合、士族層・旧型大商人・地主の主導する政治支配が、新興商人層・都市知識人層などの台頭により、変質し、再編されることが、検出された。なお、地方都市の商業機能と関連して、同業組合、商業会議所の考察の重要性が指摘され、植民地都市(大連市)の商業会議所との比較史的検討も行った。

研究成果

• [文献書誌] 大石 嘉一郎: "連合国軍の進駐と非軍事化・民主化、新水戸市の誕生・隣接町村の合併他" 『水戸市史 下巻(三)』. (刊行予定). (1998)
• [文献書誌] 田中重博: "山本市政の発足と水戸市の復興、市政の展開、開発事業の展開と行財政他" 『水戸市史 下巻(三)』. (刊行予定). (1998)
• [文献書誌] 林 宥一: "明治・大正期-市制・町村制施行以降-" 『金沢市議会史 通史編I』. 150-600 (1998)
• [文献書誌] 土方苑子: "都市教育史試論" 『教育学年報』(世織書房). 1997年版. 173-198 (1997)
• [文献書誌] 金澤史男: "現代日本財政の形成と展開" 片桐正俊編『財政学』(東洋経済新報社). 53-80 (1997)
• [文献書誌] 金澤史男: "地方の「自己決定権」と税財政制度" 『都市問題』. 88-5. 27-43 (1997)
• [文献書誌] 金澤史男: "地方分権の日本的文脈" 『専修経済学論集』. 32-1. 27-54 (1997)
• [文献書誌] 金澤史男: "公私経済緊縮運動から恐慌対策財政へ、戦時期の地方財政、戦後改革と地方財政地方財政制度の再編から高度成長の促進へ、地方の時代の地域開発計画と財政" 『静岡県史 通史編と近現代に』. 50-67,△235-245,△509-519,△698-719,△937-980 (1997)
• [文献書誌] 筒井 正夫: "町村制の施行から日清日露戦争へ,小山の産業革命 他 (刊行予定)" 『小山町史 第8巻近現代通史編』. (1998)
• [文献書誌] 大石嘉一郎: "日本資本主義の構造と展開" 東京大学出版会, (刊行予定)350 (1998)
• [文献書誌] 柳沢 遊: "日本人の植民地体験" 青木書店, (刊行予定)260 (1998)