研究課題/領域番号 |
09430029
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
松尾 聿正 関西大学, 商学部, 教授 (90067661)
|
研究分担者 |
高須 教夫 近畿大学, 商経学部, 教授 (70148732)
郡司 健 大阪学院大学, 経営科学部, 教授 (30113145)
柴 健次 関西大学, 商学部, 教授 (40154231)
須田 一幸 関西大学, 商学部, 教授 (00171273)
明神 信夫 関西大学, 商学部, 教授 (50098216)
|
キーワード | 国際会計基準 / 連結財務諸表 / 時価評価 / 金融商品 / 研究開発費 / 年金会計 / 自己株式 / 経理コスト |
研究概要 |
本研究概要は、会計基準の国際化に向けたわが国民間企業の対応動向を把握し、今後の会計制度のあり方を提言することを目的に、平成9年9月、東京証券取引所、大阪証券取引所第1部および第2部上場会社のうち、金融、保険、証券、サービスを除くいわゆる「一般事業会社」を対象として実施したアンケート調査に対する回答(有効回答数431社、回答率23.5%)に関する分析結果である。 調査を実施したのは「日本の会計制度のあり方」、「連結財務諸表制度の改訂」、「金融取引等の会計処理」、「研究開発費の会計処理および開示」、「年金会計」、「自己株式の取得」、「経理のコストとシステム」、および「一般的事項」の各項目である。 回答結果の概括的分析から次の事実が判明した。 (1)売上高平均が高い業種ほど回答率が高い。 (2)連結重視の会計制度一元化への希望が強い (3)改訂連結原則にもとづく連結財務諸表の作成手続きに関する検討が未だ十分に進んでいない。 (4)金融取引等の会計処理に関して、i)金融商品に時価評価対象の拡大余地がある。ii)デリバティブの会計処理に際して為替リスク管理との整合性が意識されていない。iii)在外子会社などの財務諸表換算による為替差損益を親会社の管理の問題と考える傾向にある。 (5)研究開発費を過半数の企業が即時費用処理するが、一定の基準を満たせば資産への任意計上を選好する企業も相当数あり、またその総額開示が企業秘密に障害になる企業が4分の1ある一方で、障害にならない企業も4割強ある。 (6)企業年金の会計処理に関して、i)年金会計に対する意識の高さは窺えるものの、年金資産の財政状態についての回答率が低い。ii)年金会計に関するルール変更の影響として、年金費用・年金債務とも1.5倍程度増加する企業が最も多く、年金資産を時価評価すれば同資産額が減少する企業が7割強に及ぶ。 (7)自己株式取得に関して、i)インサイダー規制と相場操縦規制が市場買付けを制約しているとの回答が4割強を占めた。ii)自己株式方式と新株引受権方式との間に承認形式の不整合が存在することが、ストック・オプションの選択に影響する企業が多数を占めた。iii)会計処理として資産処理方式を選択する企業が6割強を占めたが、資本払戻処理を選択する企業も3割強ある。 (8)i)人件費総額の2%を経理コストに費やしている。ii)IASや連結重視の会計制度の導入は平均2名の経理担当追加スタッフを必要とするが、そうした追加コストは当該企業が負担せざるを得ない。 (9)会計基準を日本基準から国際会計基準(IAS)および米国基準にシフトする企業ほど実態開示、配当政策、および株価動向を配慮する傾向にある。
|