研究課題/領域番号 |
09440037
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 仁一 熊本大学, 教育学部, 助教授 (20193493)
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研究分担者 |
菅原 邦雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (20093255)
田中 実 東海大学, 理学部, 教授 (10112773)
平峰 豊 熊本大学, 教育学部, 教授 (30116173)
金丸 忠義 熊本大学, 教育学部, 教授 (30040033)
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キーワード | 最小跡 / 距離関数 / リーマン多様体 / ハウスドルフ測度 / Lipschitz性 |
研究概要 |
リーマン多様体の最小跡の構造に関して、いろいろな結果が知られているが、最近、コンパクト曲面においては最小跡の長さが有限であることが分かり、Ambroseの問題が曲面の場合に肯定的に解決した。そこで、本研究では、最小跡の構造の研究を進めることを第1の目的とし、更に、その結果を用いて大域のリーマン幾何に応用する事を第2の目的とした。 本年度の最重要課題であった問題、「一般次元のリーマン多様体の最小跡がrectifiableになるか?」に関しては、田中(分担者)との共同研究においてC^3級リーマン計量のときに肯定的に解決された。しかも、最小跡までの距離関数のLipschitz性まで示すことができ、予想以上の結果が得られた。証明方針としては、既に示した第1共役跡までの距離関数のLipschitz性を用いて、第1共役跡とならない最小跡までの距離関数について、ほとんど至る所でその微分係数の評価が可能となったものである。現在、概ね論文をまとめ上げ、投稿準備中である。この結果により、最小跡内に距離を定義することができ、最小跡の幾何学の誕生を意味する。更に、何らかの曲率を持った距離構造の導入が期待され、今後の研究の継続と発展が望まれる。 「最小跡の面積(n-1次元Hausdorff測度)が無限大になるのは、いつか?」という問題に対しては、上の結果から、C^3級リーマン計量では面積有限となり、C^2級計量では面積無限大となる例を構成できることが分かった。例の構成は極めて複雑であり、現在、詳細を検討中である。また、無限遠点の最小跡の定義とその構造の研究にも上述のLipschitz性が有用と思われ、今後の研究が待たれる。 第2の目的に関しては、一般次元のAmbroseの問題の解決が期待されるが、現在の所、Lipschitz性を用いての部分的解決を模索している。また、一般には、反例が存在するのではと思われ、その構成を検討している所である。また、上述の結果より、新たに「距離関数の臨界値の集合が測度ゼロとなるか?(Sard型の定理)」という問題が考えられ、肯定的な解決が期待される。これに対しては、証明方針が得られ、現在、詳細な部分の検討中である。
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