研究課題
基盤研究(B)
この分野は物理学との接点になっており、最近特に激しく動いている分野である。世界的な核となっている所が数箇所ありそれらが互いに協力したり張合ったりしながら進んでいる。様々な分野の人達との討論を通じて、非可換微分幾何学の研究というのは,結局非可換である世界をどのように視覚化、直感化した言語にしていくかという研究、つまり非可換である世界そのものの研究(これは物理学の目標)ではなく、それを理解しようとしている人間の認識様式の研究であることがますますはっきり確認できた。具体的には非可換世界のモデルとして考案したμ-regulated algebraに対して、μがformalでない場合を含めて表現論を構築する見通しが得られた。特にμが形式的変数でない場合に「完備ワイル空間」なる概念が浮かび上がってきた。ここでの積は迂濶に拡張すると発散したり、結合律を満さなかったりしてかなり危険なものであるが、この危いものの中に昔から「真空」と呼ばれていたものと同じ働きをする元が入っており、これがこの辺の幾何学を構築するときに基礎的な概念になることが確認された。さらに、完備ワイル空間の中に普通の微積分の代数が真空表現として埋め込まれていること、また擬微分作用素の中でMetaplectic groupと呼ばれているものが入っていることも確認できた。μが正の定数として扱われる変形量子化の理論では一般に結合律が破れると言う現象が起こる。今のところこの現象に気づいている人は少なく、単に困った現象と受け取られているのだが、これが起こる仕組みがかなりはっきりしてきた。これらの現象は、これまでの描像で解釈しようとすると理解に苦しむことが多く、注意深く理論を建設しないといけない所のように思える。つまり、結合律を保持して代数を拡張しようとするかぎり、「我々はある種の対称性を捨てて行かねばならない」のである。誤解を防ぐためにこれらの結果の発表にはかなり気を遣う必要があるが、共同研究者との討論を通じて精密な物に仕上げて、発表する予定である。そこで、これらの間の積公式を間違いのない完全なものに仕上げることを後半の目標とした。これらの計算結果はそのままでは意味が不明のものだから論文として発表するにはまだ時間のかかるものであるが、計算結果の散逸を防ぐ意味でとりあえず報告書の方に収録しておくことにした。また、平成11年度までの成果は湘南国際村で我々が主催した研究集会の報告集に収録した。
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