研究概要 |
計画調書の研究目的にかかげた目標に関する成果が,着実にあがりつつある.特に,臨界ソボノフ指数の非線形性を有する,楕円型,放物型方程式に関していくつかの興味深い結果が得られた.方程式 (E) -△u=λu+|u|^<q-2>u x∈Ω, u(x)=0 x∈∂Ωに対して,次の定理が成り立つ. (1)Ω=Ω_d×R^<N-d>(R^Nの非有界柱状領域),q=2^*(2^*は,ソボノフ型埋蔵H^1_0(Ω)⊂L^q(Ω)の臨界指数),d【greater than or equal】1,N【greater than or equal】4とするとき,任意のλ∈(0,λ_1),λ_1=inf_<ν∈H^1_0(Ω)>||^▽u||^2_<L_2>/||u||^2_<L_2>>0に対し,(E)は非自明解をもつ(大谷・石渡) (この結果は,有界領域に対してよく知られているBrezis-Nirenbergの結果の非有界柱状領域への拡張を与えている.また,λ【less than or equal】0の場合には,(E)は非自明解を持たないことが知られている(大谷・橋本).) (2)Ω=Ω_d×R^<N-d>,Ω_dをd-次元円環領域とするとき,q>N_d=2(N-d+1)/(N-d+1-2)ならば,(E)は非自明解(適当なクラスに属する弱解)を持たない(大谷・橋本). (2<q【less than or equal】2^*に対しては,(E)は非自明解をゆるすことが知られており(大谷・石渡),2^*<q【less than or equal】N_dの場合を解決することが,今後の課題となろう.) 次に(E)に対する,非定常問題 (P) u_t(x,t)=△u+|u|^<q-2>u (x,t)∈Ω×(0,∞) u(x)=0 (x,t)∈∂Ω×(0,∞)を考える.qが臨界ソボノフ指数2^*より小さいときには,「解は,有限時間で爆発するか,または時間大域的に存在して,そのω-極限集合は,定常解のなす集合に含まれる」ことがわかっている(大谷)が,q=2^*のときは未解決の問題として残されていた.今回,次のようなてがかりが得られた. 「q=2^*,Ω={x∈R^N;|x|<1}かつ,解u(x,t)は正値,球対称でr=|x|に関して単調減少ならば,解は有限時間で爆発するか,または時間大域的に存在して,次をみたす(鈴木・池畠). ある点列{t_n}が存在して,測度の意味で|▽u(x,t_n)|^2→C_0δ(0) (n→∞),|u(|x,t_n)|^<2*>→C_0δ(0)(n→∞)」 この結果は,critical case(q=2^*)では,デルタ関数がsubcritical case(q<2^*)の場合の定常解に相当していることを示す意味で,大変重要な示唆を与えているが,技術的な強い仮定を要する点で不満が残る.自然な仮定のもとでの解決が,今後の課題となろう.
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