研究課題/領域番号 |
09440070
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大谷 光春 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30119656)
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研究分担者 |
石井 仁司 東京都立大学, 理学部, 教授 (70102887)
田中 和永 早稲田大学, 理工学部, 教授 (20188288)
山田 義雄 早稲田大学, 理工学部, 教授 (20111825)
坂口 茂 愛媛大学, 理学部, 助教授 (50215620)
鈴木 貴 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40114516)
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キーワード | 非線形偏微分方程式 / 楕円型方程式 / 放物型方程式 / 変分法 |
研究概要 |
(i)porous medium方程式及び一般化された方程式のC^∞-級に属する時間局所解の存在に関する研究をおこなった。従来の研究においては、porous medium方程式の弱解のHolder連続性が良く知られていたが、滑らかな(局所)解の存在については、長く、未解決問題として残されていた。大谷-杉山により、Lipshitz連続な時間局所解が構成され、ここで開発された、L^∞-エネルギー評価法を発展させ、C^∞(IR^N)に属する局所解の存在が証明された。長年の未解決問題が解決された意義は極めて大きい。 (ii)非線形楕円型方程式の解の存在、非存在及び解の多重性について研究をおこなった。IR^Nでの正値解の多重性が係数関数の空間変数Xへの依存性に大変デリケートに支配される例を与えた。また、Trudinger-Moser型の不等式の最良指数を求め、変分構造を有する非線形楕円型方程式の正値解の多重性の解析に応用した。さらに、部分対称性がある非有界領域におけるコンパクト性の破れの解析、臨界指数近くの増大度の非線形項の係数関数のトポロジーが正値解の多重性に及ぼす影響の解析などのこれからの進展が期待される成果もあった。 (iii)抽象論の立場からは、劣微分作用素に摂動項がついた作用素に対する「写像度」の理論を確立し、多価作用素が現れる物理現象への応用が検討されている。発展方程式の分野では、従来ヒルベルト空間での理論しか存在しなかった、劣微分作用素の理論を回帰的Banach空間に拡張する試みが提案され、この理論の今後の発展と応用が期待される。 (iv)山田により、p-Laplacian項と反応項とからなる準線形放物型方程式に対し、その定常解の存在と安定性、分岐構造、フラットハット解の存在などの解析がおこなわれた。さらに、sublinear項を含む半線形放物型方程式の非負初期値に対する解の一意性が示され、解の漸近挙動への今後の応用が期待される。 鈴木は、粘菌の生態を記述する走化性方程式に対して、その定常問題の変分構造を発見し、Green関数の境界挙動の精緻な解析に基づいて、解の漸近挙動、存在、一意性などを、複素関数論、曲面論、スペクトル理論、変分法などを用いて詳しく解析した。また、これらの成果を踏まえて、爆発解(chemotactic collapse)について、爆発点の有限性、爆発過程のメカニズムの解明などの詳細な研究をおこなった。坂口は、拡散方程式の解のホットスポット、空間臨界点、等温面などの時間漸近的挙動について研究した。不変な空間臨界点による球領域、点対称領域の特徴づけを与え、リプシッツ領域上でのノイマン型の初期値境界値問題に対する、不変な等温面をもつ解の精密な分類を与えた。
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