研究概要 |
平成10年度は本科研費の援助のもとで合計14件の研究発表と研究打ち合わせ国内出張を行った.うち7件は研究代表者が企画した可積分系研究集会(平成10年7月京大数理解析研究所,同12月千里ライフサイエンスセンター)の講演者への出張依頼などである.また,研究代表者は研究レビューを受けるのための外国出張を1件行った.さらに,研究室に数値シミュレーション用計算機1台を購入し,大学院学生によるプログラミング補助を得てアルゴリズムの数値実験を行った.以上の研究活動へのサポートを感謝する.この研究課題に関連して平成10年度には次の進展があった. 算術平均演算と幾何平均演算の組み合わせで定義される算術幾何平均のアルゴリズムが第1種完全楕円積分を保存量とする離散時間可積分系とみなせることを明らかにした.この発見を出発点に,まず,類似の算術調和平均のアルゴリズムを定式化し,幾何平均へ2次収束性する離散時間可積分系であることを示した.さらに,初期値を負とした算術調和平均のアルゴリズムがベルヌーイシフトの力学系に共役な可解カオス系となることを証明した.また,算術調和平均のアルゴリズムの拡張を論じ,対称な正定値行列の空間(凸性をもつリーマン多様体)上で初期値の平方根行列に2次収束するアルゴリズムを発見した.一方,離散可積分系のいわゆる超離散極限の操作によってMAX演算,算術平均,幾何平均などが相互に結ばれることがわかった.
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