本研究課題のために本年度は赤外線カメラの性能評価と小口径望遠鏡での近傍銀河の観測研究を行った。具体的には 1. カメラ制御システムとデータ取得システムの製作 PtSiチップの駆動と制御システムを汎用の観測装置用制御データ取得システムであるMESSIA IIIを用いて製作した。検出器からのCCD信号を高精度で取り出し、増幅するクロックドライバ、プリアンプを製作した。 2. 補正レンズシステムの製作 パークス40cm反射望遠鏡のニュートン焦点はコマ収差が大きく、44分角の広い視野にわたって良好な星像を得ることはできない。そこでコマ収差補正のための補正レンズを製作した。角分解能はPtSiチップの1ピクセルが2.4秒角なのでレンズ系は高い精度を必要とするが、本研究で視野全体に亘って星像直径が1画素以内に収まる3枚球面レンズの補正レンズシステムを開発した。 3. 赤外線カメラの性能評価 実験室にて完成した赤外線カメラの性能評価を行った。 4. NGC5907のハローの検出 銀河周囲を取り巻くように分布していると言われている未発見の物質であるダークマターの素性を研究するために、東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡と近赤外線カメラでNGC5907の長時間観測を行い、精密な解析を行った。その結果、近赤外線で始めて、NGC5907を取り巻く淡いハローの検出に成功した。その色の情報から低質量星によるハローであることを示唆した。
|