銀河系全体にわたる3.3μm輝線バンドを観測する冷却広視野カメラの開発を進めた。口径25cmの主鏡と副鏡からなるリッチクレチェンシステムをアルミニウムの超精密切削により製作し、クライオスタット内におさめて光学性能評価を行なった。これを専用の架台に搭載して、素子数256×256のInSb検出器を使って像を得るのに成功した。この検出器を駆動する回路系は、バイアスなどを調整して、波長3.3μmでのかなり高いバックグラウンドでの観測に対して最適化した。このシステムを使って、銀河面のサーベイを開始する予定である。 また、星形成領域を近赤外線で撮像および分光観測し、この3.3μm輝線バンドのふるまいを詳しく調べ、さらに偏光の情報も得て、個々の星形成領域での3.3μm輝線バンド生成の段階を調べた。これまでに知られていた星形成領域の中から、Mon R2とS140等の撮像と分光観測を行なった。S140のIRS1では3.1μmにある氷の吸収バンドは顕著に検出され偏光も変化していることが明らかになったものの、3.3μm輝線バンドは検出できなかった。一方、IRAS衛星で見つかった天体の中から近赤外線のスペクトルエネルギー分布を使って若い星の候補を選別したサンプルを分光観測したところ、45天体中17天体が3.3μm輝線バンドを示した。このことから、ハービックAe/Be星(典型的な若い中質量天体)よりもさらにやや若い段階では、3.3μm輝線を示す天体がきわめて多いのではないかとの示唆が得られた。S140IRS1のような天体が進化してこの段階に達するものと考えられる。また、氷の吸収を持つ天体と輝線バンドを持つ天体とを、近赤外線での撮像観測から分類することも試みている。
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