研究概要 |
平成9年8月から、岐阜県神岡鉱山内の長棟坑道から新たに掘削された活断層調査坑道において、茂住断層の地下深部の5地点から湧出する地下水中のラドン濃度の連続観測を行っている。 ラドン観測システムは、PINフォトダイオードを用いた水中ラドン検出器5台、流量計5台、ラドンデータロガー2台、パソコン1台から構成されている。ラドン娘核種の放出するアルファ線のエネルギーとカウント数及び流量のデータは、ラドンデータロガーによって10分間隔で測定されて、パソコンに蓄積されている。 5地点の湧出水の流量は、それぞれ毎分0.6から8リットルで、夏から 冬にかけて減少傾向を示している。5地点のラドン娘核種の1時間当たりのカウント数は、それぞれ5,000から11,000カウントで非常に安定している。またこの間2度、水中ラドン検出器の校正のために、液体シンチレーション法を用いて5地点の湧出水中のラドン濃度を測定した。 平成10年2月までの6ヶ月間のデータを解析した結果、茂住活断層への第2先進ボーリング孔から断層水を直接取水している観測点で、地震の前兆現象と見られる2例のラドン濃度の減少が観測された。第1例は1998年2月10日午前1時10分に岐阜県飛騨地方で起きた震央距離79km、M4.9の地震である。第2例は2月21日午前9時55分に新潟中越地方で起きた震央距離159km、M4.9の地震である。第2例の地震では、地震の起きる12時間前からカウント数が減少し始め、直前で94%まで減少して最小値となり、地震発生後約2日で元のカウント数に回復している。 平成9年度の半年間で2例の地震前兆現象を捉えたことは、茂住活断層深部の断層水中のラドン濃度の連続観測が、地震予知の極めて貴重なデータを提供する観測手法であることを証明するものである。平成10年度は神岡鉱山内の北20号断層と跡津川断層の観測点の新設を計画している。
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