研究課題
一般相対論と膨張宇宙論を中心とし、その周辺領域である数理物理学、高エネルギー宇宙線や銀河形成などの分野を含めた広範な分野についての研究打ち合わせを行う機会を多く持った。Y.Hoffman氏を京都大学に招へいし、「Data Analysis of a Cosmological Observation」についてのレビューを受けた。Hoffman氏は宇宙の大規模構造の形成、またデータアナリシスにおける世界的権威であり、我々とは、当該分野における今後の共同研究の可能性も含め、議論を行った。具体的には、大規模構造のバイアスの問題、観測データの誤差を最小にするためのウイナ-フイルターの利用方法、今後出てくるであろう宇宙背景放射の全天マップの取扱い方法等について、詳細な研究打ち合わせを行った。これらのことは、日本のすばる望遠鏡などを含めた来世紀初頭に立案されている様々な大型観測計画(SDSS、MAP等)への我々の寄与を考えていく上でも、非常に重要な問題であり、大変に有益であった。また、当該研究課題の研究成果を問うために、国内研究会、学会はもとより、いくつかの国際会議において、研究成果発表を行った。例えば、背景輻射の揺らぎを精密に測定することで宇宙の膨張速度、密度、曲率などを、決定することが可能になることを示した、「宇宙背景輻射の揺らぎで宇宙論パラメータをはかる」、さらに、銀河以下の、矮小銀河や球状星団などのスケールでの揺らぎについてはじめて正確にその発展を求めることに成功した、「膨張宇宙における密度揺らぎ」、原始銀河雲の分裂収縮についてその物理的内容を詳細に検討した「原始銀河雲の進化について」、また、今後の重力波観測計画と関係し、裸の特異点が存在する場合の重力波についてその波形を求めることに成功した、「Gravitational Waves from naked singularitiesについて」等である。さらに、論文リストにも見られるように、前述の膨張宇宙における小スケールでの密度揺らぎの発展について、そのフォーマリズムはすでに、研究論文にまとめた。これは音速の時間変化の発展方程式を基礎方程式から導き出し、音波モードの密度揺らぎの振動がどのように発展するかを調べたものである。また、その結果得られる、実際の密度揺らぎのスペクトルについての研究論文も、すでに掲載が決定されている。さらにその他にも、研究課題に関係する様々な研究、たとえば、中性子星からのガンマ線の放出過程、超新星からのニュートリノの放出過程などについての研究も着実に進展し、研究論文にまとめることができた。
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