研究概要 |
われわれは、多成分カルコゲナイド半導体を対象として、ラマン散乱、フォトルミネッセンス測定、遠赤外分光測定法等を用いて研究を進めている。ここでは主にGe-Se-S系ガラスのラマン散乱測定について紹介する。ねらいは、ネットワークガラスの構造や力学特性などの諸性質に対し、短・中距離構造の形成・変化、硬さのパーコレーション、フラジリテイ、フラクトンといったミクロ・メゾスコピックな理解と結び付けることである。 高純度のGe,S,Se元素から融液急冷法で多成分ガラス試料(平均配位数〈r〉}=2〜2.8)を作製し、室温においてラマン散乱測定を行った。ガラス物質の低波数ラマンスペクトル(3-100cm^<-1>)は、格子緩和モードに関連する準弾性散乱と振動モードに関連するボソンピーク(BP)から形成されている。 フラジリティ低波数側の緩和モードとボソンピーク(BP)との間に谷が存在する。この谷における散乱強度とBPの散乱強度との比瑞I_<min>/I^<max>をガラスのフラジリティに比例する量として見出した。〈r〉<2.2の場合、Ge原子の増加によりGe(S,Se)_<4/2>四面体が多く形成されたので、フラジリティは急激に減少する。〈r〉>2.7の場合、Ge-Geボードが増え、ガラス構造の乱れも増えるので、ガラスが脆くなり、フラジリティが大きくなる。〈r〉=2.4付近に、フラジリティが急激な変化を示す段差が見られる。この平均配位数〈r〉の増加により、フラジリティの不連続的に減少することは、硬さのパーコレーションの閾値が2.4にあるためである。
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