研究課題/領域番号 |
09440118
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 (1998) 大阪大学 (1997) |
研究代表者 |
櫛田 孝司 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (00013516)
|
研究分担者 |
兼松 泰男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00211855)
|
研究期間 (年度) |
1997 – 1998
|
キーワード | 構造揺らぎ / ホールバーニング / 複雑系物質 / ミオグロビン / ガラス転移 |
研究概要 |
我々が開発した過渡的ホールバーニング分光法は、広い温度ならびに時間領域にわたって、さまざまな物質の構造揺らぎを直接的に見ることを可能にする極めて優れた方法である。本研究では、実験方法を改良し、その測定時間分解能を従来のマイクロ秒から10ナノ秒以下に上げ、また実験の再現性を高める工夫を行った。次に、この方法をメルブロミン色素をグリセリンと水の混合物に溶かしたもの及び亜鉛置換ミオグロビンを同じ混合物に溶かしたものに適用し、結果を詳しく比較した。その結果、150-300Kの広い温度領域にわたってホールの重心の時間依存性はともに拡張指数関数で表され、揺らぎの相関時間はVogel-Fulcher則に従うこと、しかし色素溶液と蛋白質溶液とでは指数関数からのずれが大きく異なり、時間特性の温度依存性も両者できわめて異なることを明かにした。色素溶液の場合の振舞がグリセリンと水の混合物について誘電分散の実験から求めた構造揺らぎの特性と一致することは、ホールの重心の時間依存性が電子基底状態における構造揺らぎを正確に反映するものであることをはっきりと示している。この研究で、蛋白質の構造揺らぎがまわりの溶媒の粘性の影響を強く受けており、そのガラス転移が溶媒の凍結によって支配されていることを直接的に示すことができた。また、それを考慮に入れることにより、蛋白質の溝造揺らぎが階層的に束縛されたダイナミクスモデルによりうまく理解されることを明らかにした。さらに、この測定をチトクロムCやポリマー膨潤体、ゲルなどの対象にまで拡げて、構造揺らぎのダイナミクスを調べる試みや、偏光分光を組み合わせて不均一広がりの中に埋もれているスペクトルの形状を抽出することができることを示す実験も行った。
|