研究概要 |
固体内のフォノン系、電子系のコヒーレントな振動を発生、検知することを目的として、〜10フェムト秒の時間幅のTiサファイアパルスレーザーと、このレーザーを用いた時間領域コヒーレントフォノン測定システムを構築した。試作したシステムの性能を、HSG発生と固体とのコヒーレントフォノンの観測から評価した。その結果、パルス幅として16fs、反射率変化として△R/Rとして〜10-7の値を得た。このシステムによって,これまで計測が困難であったGeについても良好なS/N比でコヒーレントフォノンが観測できた。 半金属、半導体、半導体・半金属超格子、相転移物質などの種々の物質についてコヒーレント振動を調べたが、その結果を要約すると以下のようになる。 (1)種々の温度でのコヒーレントフォノンスペクトルとラマンスペクトルの比較から、Biにおけるコヒーレントフォノンの減衰過程に対してエネルギー緩和が支配的で、位相緩和の寄与は小さいことを明らかにした。 (2)Bi/Sb超格子の時間分解反射率測定から、各母体の光学フォノン、Bi-Sb界面モード、縦波音響フォノンの折り返しモードのコヒーレント振動を初めて観測した。また短周期超格子の音響フォノンの振動数が計算値と大きくずれていたことから、弾性異常が起こっていると考えた。 (3)空間変調素子を用いてパルス列を生成し、これを用いてBi/Sb混晶のコヒーレントフォノンの振幅制御、特定モードの選択励起が可能であることを実証した。 (4)GaAs,InPで光励起した電子が関与するプラズモンLOフォノン結合モードのコヒーレント振動を観測し結合モードの上下の分枝を初めて観測した。また結合モードの減衰時間のキャリア濃度依存性を求め、そのダイナミクスの議論を行った。 (5)GaAs-AlAs超格子の縦波音響分枝の折り返しモードを観測し、コヒーレントフォノンの発生、検出機構解明の手がかりを得た。 (6)相転移物質(V203,η-Mo4011,GeTe)のコヒーレントフォノンを観測し、ラマンFTスペクトルとの比較から発生機構、緩和機構についての多くの知見を得た。
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