研究概要 |
リラクサー誘電体は,その巨大誘電率とフラットな温度特性,物質の中でもっとも大きな電気機械結合係数のため,応用開発が盛んに行われている物質であるが,その機能がどうして発現するかについては,いまだ定説はない。本研究の目的は,このリラクサーの誘電特性を解明し,さらに優れた特性をもつ材料を作成する指針を得ようとするものである。今年度は主に,中性子散乱と光散乱の実験を行った。 1. 代表的なリラクサーであるPb(Zn1/3Nb2/3)O3(PZN)の構造を,原子力研究所のJRR3号炉中性子粉末解析装置HERMESを用いて室温から500℃の温度範囲で25℃の温度間隔で解析した。この結果,誘電率が最大となるはるかに高い温度から,立方晶マトリックス中に極性をもった三方晶マイクロクラスターが生成し,温度下降とともに発達すること,しかし誘電率最大温度の下でも,その体積比は40%にとどまり,長距離秩序の発達が何らかのメカニズムにより阻止されることを明らかにした。 2. 原子力研究所のJRR3号炉の3軸中性子分光器4Gを用いて,PZN単結晶の散漫散乱の測定を行った。この結果,各逆格子で異なる異方性をもった散漫散乱が観測された。この結果を,誘電エネルギー,弾性エネルギーおよび電歪エネルギーをとりいれたGL方程式を解くことにより説明した。これにより電気分極と結合した弾性歪がリラクサーの相転移機構に本質的な役割を果たしていることを明らかにした。 3. この機構をさらに詳しく調べるために,光準弾性散乱装置を試作した。
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