研究概要 |
昨年度は分子科学研究所より東京大学物性研究所に移動をし、特に移動後は研究を継続発展させるための準備を行った。分子研において、レーザー加熱装置を光電子顕微鏡装置に組み込み、サンプルの温度を低温(約33K)にすることが可能なサンプマルニピュレーター(クライオスタット)を製作したが、両者を組み合わせることで、33Kから1500Kを超える温度での、光電子スペクトルの測定が行えるほか、表面のクリーニングなども行えるようになったことが確かめられていたので、今年度前半はSi(111)表面に吸着した、Sb,Biが作る超格子構造表面のsurface photo-voltageの研究を引き続いて行った。又昨年は、温度によって価数が変わる物質として着目されている、EuNi2(Sil-xGex)2について、極低温(33K)、低温(83K)、室温(300K)でEu3d-4f共鳴光電子分光測定を行い、電子状態の温度変化を観測し、各温度での価数の評価と共に、スペクトルの光エネルギー依存性など、理論、実験の双方から検討を行ったが、今年度は4d-4f共鳴状態のより表面敏感な状況での研究を進め、バルクと表面成分についての考察を進めている。物性研では、より位置分解能をあげた光電子顕微鏡装置を立ち上げを続けている。まだデータは出できていないがレーザー光を照射できるような配置で、測定装置は完成した。今後継続して計画を進めて行く。又分子研と研究代表者の研究拠点である物性研筑波分室(高エネルギー加速器研究機構内)との間でのレーザーの移動や調整も問題なく行えることがわかり、つくばでは、Si(111)表面の高温状態での相である、1x1表面について、高分解能内殻光電子スペクトルを測定し、興味深い結果を得た。現在データの解析を進めている。このように今年度はつくばと、岡崎分子研での双方で研究をすすめる体制を整え、上に述べたほかに、有機伝導体である、DCNQI,DMTSA等でも低温状態のスペクトルを測定している。
|