研究課題/領域番号 |
09440126
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小田 研 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70204211)
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研究分担者 |
桃野 直樹 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00261280)
伊土 政幸 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90111145)
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キーワード | 擬ギャップ / 一重項対 / STM / STS / 銅酸化物高温超伝導体 |
研究概要 |
本研究は、高温超伝導の発現と密接に関わる低ホール濃度における電子系の異常を次の2点に焦点を絞って調べることを目的とする。 1)ホール濃度の異なるビスマス系銅酸化物において超伝導に本質的なCu-O面のSTM原子像観察を行い、低濃度におけるCu3d電子の局在性とZhang-Rice一重項状態の存在の是非を調べる。 2)トンネルスペクトルのホール濃度依存性と温度変化を詳細に測定し、低濃度において超伝導転移温度T_Cのかなり高温T^*から発達する擬ギャップの原因を調べる。 今年度は、擬ギャップの起源に関して次のような興味深い結果が得られた。 i)T≪T_Cでの超伝導ギャップは反強磁性相に向かって著しく大きくなる。 ii)この超伝導ギャップの大きさ2Δ。から予想される平均場の超伝導転移温度T_C^<MF>、或いは、平均場RVB理論で期待されるスピンチャンネルにおける一重項対形成温度は、擬ギャップが開き始める温度T^*とほぼ一致する。 iii)T^*以下の電気抵抗が超伝導の前駆現象のように振る舞うことも明らかになった。 以上の結果は、超伝導に転移する十分高温から既にインコヒーレントな何らかの一重項対が形成されていることを示唆するものであり、超伝導の発現機構を理解する上で極めて重要な知見と考えられる。
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