研究概要 |
本研究により得られた成果を以下にまとめる。 1)Bi2212の一粒子スペクトルにおける低温(T<<T_c)エネルギー・ギャップ2Δ_0が、ホール濃度pの低下と共に単調に増大し、擬ギャップの発達が顕著となる温度T^*とほぼスケールすること、また、T^*は2Δ_0から得られる平均場のT_c(T_<co>)とほぼ一致することが明らかとなった。さらに、T_c(p),T^*(p)の値は系によって異なるが、多くの高温超伝導体においてpを最大のT_c(T^<max>_cを与えるホール濃度p_0で、T_c(p),T^*(p)をT^<max>_cで規格化すると、T_cとT^*およびT_<co>(∝2Δ_0)はそれぞれユニバーサルな曲線にほぼ載ることも明らかになった。このことは、高温超伝導体の擬ギャップと超伝導が一体の現象であることを示しており、超伝導転移の機構を考える上で重要な成果である。 2)STSにより、La214における擬ギャップの存在が始めて明らかとなった。また、電子比熱や磁化率の測定から、T^*はLa214でもBi2212と同様T_<co>とほぼ一致することが明らかになった。 3)La214における磁化率の磁場依存性と電子比熱の温度変化の測定から、超伝導臨界揺らぎはT_c近傍のT^*よりかなり低温(T_cの2割程度高温)で発達し始めることが明らかになった。擬ギャップの起源として一重項(電子)対の形成が考えちれているが、本研究における超伝導臨界揺らぎに関する結果は、T^*付近から形成されると思われる一重項対の集団運動におけるコヒーレンスがT^*より十分低温のT_cの近傍で発達することを示しており、超伝導転移の機構を考える上で興味深い成果である。 4)Bi2212とLa214両系で、k_BT_c〜pΔ_0の関係が成立すること、すなわち、T_cを決めるエネルギー・スケールが〜pΔ_0となることが明らかにされた。 本研究では、以上の研究成果を基に超伝導転移の機構も考案された。
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