本年度(平成10年度)はまずジョセフソンプラズマ共鳴の実験をコラムナー欠陥を持つ試料に対して行った。コラムナー欠陥は重イオン照射によって造ることができ重イオン照射はフランスとの共同研究により行った。この実験によりボーズグラス転移と呼ばれる状態が融解した渦糸液体状態において新しい転移を発見した。この転移は低い磁場でデカップルしていた渦糸が高磁場側でカップルするという従来の常識とは逆の特異な転移である。さらに詳細な磁化率測定によりこの転移がマッチング磁場の約1/3において起こることを見つけた。さらに詳細な解析により渦糸の超伝導面に垂直方向の位置相関関数を計算することができた。また最近ではBWO発信器を用いることにより連続的にマイクロ波周波数を変化させてジョセフソンプラズマ共鳴の実験を行いことができるようになった。次に高温超伝導体のホール効果は渦糸状態で符号反転を示すことが知られていたが我々はこの符号反転を系統的に調べた。その結果符号反転は高温超伝導のアンダードープ側でのみ起こる現象であることを発見した。このことはホール効果の反転現象が渦糸の電子状態に関与した現象であることを明確に示している。さらにこの反転現象はBCS理論に基づく時間に依存したGintzburg-Landau方程式の予想と逆であり渦糸の運動に関して電子相関の効果が重要であることを示している。
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