研究課題/領域番号 |
09440129
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
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研究分担者 |
小山 富男 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30153696)
小椎八重 航 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20273253)
石原 純夫 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30292262)
遠山 貴巳 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (70237056)
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キーワード | Mn酸化物 / 巨大磁気抵抗 / 軌道秩序 / 金属絶縁体転移 / 強磁性 / 強相関電子系 / 交換相互作用 / 異常X線散乱 |
研究概要 |
ペロブスカイト型Mn酸化物La_<1-x>Sr_xMnO_3はxを変化させることにより、多彩な磁気的電気的性質を示す。x=0では層状反強磁性絶縁体であるが、xを変化させることによりキャリアが導入され、x>0.15で強磁性金属になる。このような物性を支配する機構に次の二つが考えられる。Mnイオンの3d軌道は結晶場のために二重縮退したe_g軌道と三重縮退したt_<2g>軌道に分裂し、強いフント結合のためにMn^<3+>イオンの電子配置は(t_<2g>)^3(e_g)^1となる。そのためeg軌道の電子は二つの軌道のどちらに入るかという軌道の自由度が存在する。絶縁体状態のLaMnO_3ではこの軌道が秩序状態を作ることによりスピンを強磁性的に揃えようとする。その結果、t_<2g>軌道のスピン間の相互作用との競合が起こり層状反強磁性状態が得られる。一方、キャリアが十分ドープされたLa_<1-x>Sr_xMnO_3(x>0.15)ではキャリアのスピンがMnイオンに局在したt_<2g>電子のスピンを揃えるため強磁性金属状態が得られる。このような二つの機構はLa_<1-x>Sr_xMnO_3では0.1<X<0.15の領域において競合しており磁気的電気的に複雑な状態が予想されていた。我々はこの領域において、高温では金属強磁性が安定であり、低温で強磁性絶縁体が安定であること、及びその間で一次の相転移が起こることを理論的に明らかにした。すなわち高温では軌道の自由度のエントロピーの効果で軌道の無秩序状態が実現しており、そのために金属強磁性が安定になっている。ところが温度が低下するとエネルギーを下げるために軌道の秩序状態が出現する。それと同時にスピン間の超交換相互作用が現われて強磁性が強くなる。この状態では軌道の秩序がキャリアの伝導を抑えるように働くため、絶縁体となる。最近、東北大学理学部及び金研の実験グループはKEKの実験グループと共同でLa_<1-x>Sr_xMnO_3(x=0.12)を詳細に調べ、温度を低下させることにより強磁性金属から強磁性絶縁体への一次転移を発見した。また、この一次転移に伴って軌道の秩序が出現することも異常X線散乱実験により確認した。
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