研究概要 |
今年度は昨年度に続き、日本原子力研究所JRR-改3号炉に設置された熱中性子スピンエコー分光器の性能改善が行われると同時に、非弾性散乱スピン・エコー実験シミュレーション・プログラムが整備され、テスト実験の解析及び新しいQ分解能向上の可能性が検討された。同時にこの熱中性子スピンエコー法を適応出来るであろうと思われる動的歪を持つ物質の中性子散乱研究及び大きい波数におけるスロー・ダイナミックスの検証か行われた。 1)従来より短い波長、1=1.609^^○,におけるスピン・エコー実験が可能になった。これにより7picosecから155picosecのダイナミック領域の測定を可能にした。 2)スピンエコー分光法の性能改善として、スピンエコー分解能を観測しようとする励起の分散関係にマッチさせるgradient coilの設置を完了し、原理的に作動することが確認された。またこのgradient coilの設置により分光器の磁場電流パラメターが多数になるために非弾性散乱スピン・エコー実験シミュレーション・プログラムが整備され、テスト実験の解析が行われた。 3)この熱中性子スピンエコー法を適応出来るであろうと思われる動的歪を持つ物質の研究として、スピン・パイエルス物質CuGeO_3,NaV_2O_5等における非弾性中性子散乱実験を実施した。 4)この熱中性子スピン・エコー法を用いて、 i)ドープした二次元三角格子系CuFe_<0.95>Al_<0.05>O_2の秩序したモーメントのスロー・ダイナミックスの検証が実施され、低温相では140psecの時間スケールで静的であることが明らかになった。 ii)ガラス転移を示すPolybutadieneの大きな波数Q=2.9A^^○^<-1>におけるダイナミックスが測定され、これまでに測定された小さい波数Q=1,5A^^○^<-1>におけるダイナミックスとは異なる温度依存性を示すことか明らかにされた。
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