研究課題/領域番号 |
09440136
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前野 悦輝 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80181600)
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研究分担者 |
山田 耕作 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90013515)
石田 憲二 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (90243196)
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キーワード | 超伝導 / ルテニウム酸化物 / p波超伝導 / NMR / 異方的超伝導 / スピン3重項超伝導 / Sr_2RuO_4 / 比熱 |
研究概要 |
本研究の目的は、層状ルテニウム酸化物Sr_2RuO_4の超伝導状態を究明することにある。これまでの成果で超伝導対称性が従来型のs波ではないことがわかっていた。今年度の成果をまとめると以下のとおりであり、スピン3重項p波超伝導であることを実験的に確立したことが最も重要である。 1. Sr_2RuO_4単結晶中の酸素16を同位元素17に置換することで、酸素の核磁気共鳴実験を進めた。その結果、スピン磁化率は超伝導転移温度以下でも全く変化せず、したがってスピン3重項の超伝導状態が実現していることが確実となった。 2. 磁場方向と結晶軸方向とを正確に一致させて比熱を測定した結果、Sr_2RuO_4の超伝導状態は複数のエネルギーギャップからなる「軌道依存型超伝導状態」で説明できることが明らかになった。 3. 本研究で育成したSr_2RuO_4について行ったミューオンスピン緩和の実験から、超伝導状態で自発内部磁場が発生していることが明らかになった。このことから超伝導状態では時間反転対称性が破れていることが結論できる。 以上から、Sr_2RuO_4の超伝導はスピン3重項p波超伝導であることが結論できた。また、その波動関数としてdベクトルd=z(k_x+ik_y)で表わされる状態が、これまでの実験結果を矛盾無く説明できる。すなわち電子対のスピンは擬2次元面内にあり、電子対の相対運動の角運動量ベクトルが擬2次元面に垂直方向のクーパー対が超伝導を担っている可能性が高い。今後はこの状態であることを確実にするための実験を行う必要がある。それと共に、超伝導機構を明らかにするためのスピン揺らぎの性質を詳しく調べる予定である。
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