研究概要 |
非磁性不純物(La-4%,5%,Zn-1%,3%)、磁性不純物(Ni,1%,2%,3%)をSrCu_2O_3に添加した系、ホールがドープされたSr_<14>Cu_<24>O_<41-y>系についてゼロ磁場中でのCuNQR測定を行い以下のことを明らかにした。 1.SrCu_2O_3にZnおよびNi添加した系では、共通に反強磁性磁気秩序が起こることを示し、磁気モーメントの大きさは、不純物近傍で空間的な分布をもつが、丁度不純物の中間領域では、0.04μ_B程度の比較的に均一な反強磁性自発分極をもつことが明らかになった。 2.Zn添加系で反強磁性磁気秩序が起こる臨界濃度は、0.5%付近であることを緩和時間の測定から明らかにした。 3.Laを添加した系(電子ドープ系)では、磁場による反強磁性分極が誘起されるが最大5%まで磁気秩序は起こらないことが明らにした。これは、LaがSr位置に置換され、ラダー面のCu位置に均一に電子がドープされることに起因していることを示唆した。 4.ホールがドープされたSr_<14>Cu_<24>O_<41>系では、すでに存在するホール濃度が少ない試料では、空間的に均一な反強磁性分極が磁場によって誘起されることを見出した。このことから、ある臨界濃度以下ではホール対を形成することなく、低温で集団的電荷励起が存在し、反強磁性分極の運動平均化が起こると結論した。La添加系のような電子ドープ系とは異なり、ホールドープ系ではホールの集団的な低エネルギー励起が存在することを示唆した。 スピン1重項を形成して量子無秩序状態となる2本梯子量子スピン系に固有な量子コヒーレンスの効果によって、わずかな不純物、電荷の導入で基底状態が見事に変貌することが本研究で明らかとなった。
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