蛋白質にとって可能な配列数は莫大で、生物の進化史的な時間の範囲内に広大な配列空間をくまなく探して最適化することは不可能であるように思われる。どのような仕方によって、広大な配列空間から現存の蛋白質が選ばれてきたのであろうか?この問題を考えるために、経験的ポテンシャルを用いた模型が分析された。データベースから導かれたポテンシャルにより経験的ポテンシャルが構築され、機能を持つ配列を選択するだけでフォールド能力を持つ配列が自然に選ばれる、というシナリオの妥当性が検証された。機能を持つためには活性部位の構造が適切な空間配置を保たなければならない。そこで、活性部位の構造が適切である、という条件を用いて配列を選択すると、活性部位から離れた場所にも2次構造が発達し、フォールド能力を持つ配列が現れる。機能の若干の向上が2次構造の発現に大きく寄与する例が報告された。また、機能を持つ全体構造は非常に多数存在し、その一つがゆらぎによって偶然選ばれること、選ばれた全体構造を最安定化するように配列は進化せず、機能を保持できる範囲の多数の配列の間を中立的にゆらぐこと、この2つの理由により、全配列空間の網羅的探索なしでも、実際的な時間内でフォールド能力を持つ配列が選択されうることが示された。実験においては、ランダムに合成されたペプチドのうち、水にとけるものは弱い加水分解作用を持つことがあること、また、その作用の強さは配列に依存することが示され、機能によって配列を選択することが可能であることが示された。今後、実験と理論が協力してさらに新しい展望を開くことが期待できる。
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