内殻電子と原子核からの輻射が競合する制動輻射過程の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09440148
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 石井 慶造 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00134065)
• 研究分担者: 松山 成男 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70219525) ; 山崎 浩道 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00166654)
• キーワード: 制動輻射過程 / 原子制動輻射 / 原子核制動輻射 / イオン・原子衝突 / 内殻電離 / 反コンプトンX線検出器 / コンプトンテイル / 連続バックグラウンド

研究概要

本研究では、数MeVのイオン衝撃によって発生する内殻電子からの制動輻射と原子核からの制動輻射が混在して競合するエネルギー領域のX線発生過程が研究された。
高エネルギー連続X線スペクトルを測定するために平成9年度で開発されたコンプトン除去X線測定システムの動作試験が、同じく同年度に開発された角度分布測定用X線散乱槽を用いて、ナトリウム原子核を陽子衝撃で励起することによって発生する440ke.Vγ線に対して行なわれた。γ線がターゲットから検出器に直接入射して発生するコンプトンバックグランドはほとんど除去できることが示され、システムとして正常に動作していることが確認できた。ただし、振動によるノイズ、検出器まわりの物質で散乱されたγ線によるコンプトンバックグラウンドが以外に大きく、その除去に努力が払われた。本成果は、第16回PIXEシンポジウム(平成10年10月28〜30日、盛岡)で発表された。
連続X線スペクトルは上記バックグランド以外に不純物の特性X線の強い影響受けるため、高純度アルミニウムターゲットの製作に努力が払われた。1.5MeV陽子照射による数keVから数10keVの連続X線を測定し、はじめて原子制動輻射と原子核制動輻射が競合するエネルギー領域のX線測定に成功し、また原子制動輻射と原子核制動輻射の強度が明かにその角度分布を異にすることを示した。
原子制動輻射と原子核制動輻射の理論展開も行なわれた。本理論で計算される連続X線スペクトルにより、PIXE元素分析の連続バックグラウンドを同定し、X線スペクトル解析の完全自動化の可能性を示した。この成果は、第8回粒子線励起X線(PIXE)とその応用に関する国際会議(Lund、1998年6月14-18日)で発表された。本会議の総括において、委員長より高く評価された。また、会議中および会議後、国際会議委員長をはじめとした多くの外国人研究者より、本研究についての多くの問い合わせがあった。

研究成果

• [文献書誌] 酒井卓郎: "Development of a fast multi-parameter data acqisition system for microbeam analyses" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. 136-138. 390-394 (1998)
• [文献書誌] 濱野毅: "Diagnosis of the profile of the heavy-ion microbeam and estimation of the aiming accuracy of the single-ion-hit with using(R39" Radiation Physics and chemistry. 53. 461-467 (1998)
• [文献書誌] 織原彦之丞: "Isospin Mixing in the Isoparic Analog State Derived from the(p,np)Reaction on ^<140>Ce,^<172,174,176>Yb and ^<208>Pb" Pysical Review Letters. 81・17. 3607-3610 (1998)
• [文献書誌] 室園慶介: "PIXE spectrum analysis taking into account bremsstral lung spect" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. (in press). (1999)
• [文献書誌] 山崎浩道: "Elemental Analysis of Soluble and Insoluble Fractions of River waters by Particle-Induced X-Ray Emission" The AIP Proceedings of 15^<th> International Conference on the Application of Accelerator in Research and Industry. (in press). (1999)
• [文献書誌] 松山成男: "An Endurance Test of Kapton Foil in-Air PIXE system" The AIP Proceedings of 15^<th> International Conference on the Application of Accelerator in Research and Industry. (in press). (1999)