研究概要 |
三宅島においては8ケ所においてプロトン磁力計による全磁力観測を,また島内9ケ所に電極を埋め,NTTの電話回線を利用して長基線の電場測定(8チャンネル)を継続した.八丈島-三宅島,三宅島-伊豆大島間の海底ケーブルを利用して,電場測定を継続した.八丈島に2ケ所,神津島に1ケ所,御厳島に1ケ所の全磁力観測を継続した.海流に誘導される電流が離島でどのような電磁場を作るかを理解するために,一様な深さの大洋に円形の島が存在して周囲に長波で近似される潮流が流れる場合の電磁場を理論的に考察した.この問題はLARSEN(1969)によって既に調べられているが,平均潮位時(流速ゼロ)における誘導電流系は島の中央部分においても鉛直成分磁場を作ることを導き,実際に三宅島においてこのような磁場が観測されていることを見いだした.これはLARSENモデルでは見落とされていた効果である.この潮流モデルからの類推によって,黒潮が三宅島の周囲を流れる場合は北東への流れが卓越するので,それと直角方向への電流が誘導されるであろうことを推測した.実際に長基線の電場測定では,北西一南東成分の変化が圧倒的に大きく,それと直角な北東一南西方向には電場変化がごく小さいことが約2年の観測で判明した.またその大きな電場変動には全磁力の変化が対応し,島の南西部の全磁力の変動は主として北西一南東に流れる黒潮誘導電流で作られることが分かった.また八丈島の長期間の全磁力データと三宅島の4年間の全磁力データを解析した結果,三宅島では山頂カルデラ南部に熱消磁が起こり,島全体ではマグマ溜りの膨張に伴う全磁力減少が起こっていることが判明し,三宅島火山は噴火の準備過程にあることが示された.
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