地殻のダイナミックスや地震発生機構を明らかにするためには、地殻の条件を十分にカバーしうる圧力・温度条件での岩石の力学的物性を明らかにする必要がある。このような考えの下に、本研究代表者達は六方押プレスを用いて、圧力(封圧)3.7GPa、差応力3GPa、温度1000℃までの実験を可能としてきた。しかし六方押プレスの荷重方式が手動あるいは半手動で行われているため、一定の荷重速度あるいは変位速度での実験が不可能である。 本研究では、その荷重方式を制御装置を導入することにより改良を行った。それにより従来より効率よく実験を行えるようになり、現在まで行われてきた封圧3GPa、温度300℃までの実験を1000℃まで拡張し、岩石の変形・破壊・摩擦すべり特性を正確に把握し、地殻および上部マントルの破壊機構および流動機構を明らかにする。以下に今年度の研究から明らかになった知見について報告する。 室温での高封圧下の岩石の変形破壊実験から、摩擦強度と圧縮強度が等しくなる封圧領域での破壊は、それ以下の封圧で起る既知の脆性破壊とは異なる機構を示す(夫々、高圧型及び低圧型破壊と呼んでいる)。岩石の強度に及ぼす寸法効果を考慮すると、地殻での破壊は高圧型である可能性がある。本研究による高温での実験から高圧型破壊は異常な強度の低下を示すことが明らかになった。これは地殻の深さ8〜12kmでは強度が低下することが示唆される。このことは、地震活動度の深さ分布に対する脆性-延性説での、強度が高いから活動度が高くなる可能性を含むという不自然に思える説明を解消する可能がある:すなわち、地震はそこでの強度が低い方が起こりやすいと考えられる。 現在、この強度の減少を確かめるために、封圧1.5GPaでカコウ岩の強度の温度変化の実験を行っている。その成果は次年度以降に明らかになることが期待される。
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