研究課題/領域番号 |
09440160
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渋谷 秀敏 熊本大学, 理学部, 助教授 (30170921)
|
研究分担者 |
伊藤 康人 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (20285315)
横瀬 久芳 熊本大学, 理学部, 助手 (50230644)
渡辺 一徳 熊本大学, 教育学部, 教授 (10040049)
|
キーワード | 古地磁気学 / 地磁気永年変化 / 阿蘇火山 / 火山岩 / 地磁気エクスカージョン |
研究概要 |
火山岩を用いた地磁気永年変化(PSVL)の地域性の研究は、地磁気ダイナモモデルを検証する古地磁気データの有力な候補である。世界有数の火山地帯であり、古地磁気学も盛んであるにもかかわらず、わが国のPSVL研究では、VGPの分布の詳細について議論するほどのデータがたまっていない.そこで、我々は九州地方の火山岩の古地磁気測定を行うこととし、昨年度は阿蘇火山周辺の火山岩について古地磁気測定を行った。その際に、Aso-2火砕流が非常に深い伏角を持っていることを発見した。このサイトの古地磁気方位から計算したVGPは45°より低緯度で、地磁気エクスカージョンと呼べる物であった。本年度は、このAso-2火砕流に焦点を絞って、この地磁気エクスカージョンのキャラクタリゼーションをした。 阿蘇山の周辺に広く分布しているAso-2火砕流の古地磁気方位のばらつきの程度を知ることを目的に、Aso-2火砕流の分布のできるだけ広い範囲で試料を採集し、古地磁気を測定した。また、比較のために通常の正帯磁期に噴出したAso-4火砕流の古地磁気も測定した。その結果、Aso-2火砕流の古地磁気方位は、昨年度測定したサイトの方位が最も伏角の深いものであって、その他はサイトのVGPは60°程度で、エクスカージョンと呼ぶかどうかは際どいところであることが分かった。また、サイト平均VGPのばらつきはAso-4火砕流のものと同程度であった。中間的な磁場の時期には主磁場強度は弱く、ランダムな方位を持つ地殻磁場の影響で方位のばらつきが増えることを想定していたのであるが、結果はそうならなかった。この結果は、テリエ法による古地磁気強度の測定からも裏付けられた。従って、Aso-2火砕流の時期には低VGP緯度に関わらず磁場強度はそれ程低くなかったと結論付けられる。 また、一つの火砕流の様々な地点での古地磁気方位のばらつきの研究から、PSVL研究において試料採集のばらつきで導入される誤差が十分小さいことが分かったことも成果である。
|