研究概要 |
年度当初の計画通り、梅雨前線に特有な温度や水蒸気量の南北傾度及び大規模な西風のシアが、梅雨前線における対流の組織化や振舞いにどのような効果をもっているかをみるための基礎的な研究として、2次元モデル(東西一様)を用いて数値実験を行った。モデルは山岬(1984)の非弾性方程式系で、氷相過程は含めていない暖かい雨のモデルである。格子間隔は水平1km,鉛直には30層をとり、高度22kmまでを扱った。対流が西風ジェットの南側で起こるような初期条件を設定した。数値実験の結果によれば、対流域で大きな水蒸気量の南北傾度が生じ、雨滴の蒸発によって形成されるコールドプールに伴う大きな温度傾度と共に、対流の持続に寄与する。対流の持続により、下層で東西風の大きな水平シアが生じ、地表摩擦の効果がきいて、摩擦による吹き込みを一層強化し、これがまた対流の強化を引き起こすという正のフィードバックがはたらいていた。南北温度傾度と温度風の関係にある西風の運動量を鉛直循環が輸送する効果は、対流の熱的効果に比べて十分小さいことがわかった。ただし、南北温度傾度に伴う顕熱の輸送は小さくない効果をもっている。 2次元モデルではメソβスケール(水平20-200km)の対流群の振舞いを適切に理解できないので、3次元モデルによる数値実験も行った。ただし、水平格子間隔1kmのモデルは計算機の制約のため困難なので、格子間隔20kmを用いた。この場合、積雲対流スケールは扱えないので、この効果は陰に取り扱う山岬(1986)の静力学モデルを用いた。モデルの中では、水蒸気の南北傾度の大きい梅雨前線に対応する帯状の領域でメソβスケールの対流群がシミュレートされ、また、対流の効果で小さな低気圧が発生して、メソβスケールの対流群がさらに組織化していく。この過程でやはり地表摩擦が重要な役割を果たしている。
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