研究概要 |
梅雨前線のメカニズムや台風との相互作用を適切に理解するためには、対流のパラメタリゼーションを改善することは依然として最も重要な課題の一つである。今年度は、昨年度に開発した新たな対流のパラメタリゼーションをさらに改善して数値実験を行った。具体的には、1988年7月,1993年7月,1998年9月などの梅雨前線に伴う対流群や強い降雨の事例について、メカニズムを明らかにしつつモデルの改善を行った。これを従来のいくつかのパラメタリゼーションを用いた場合と比較して,より現実的な結果が得られることが分かった。 1998年9月20日前後におきた事例は秋雨前線が台風を刺激して強い雨が観測されたものであるが、この事例について、気象庁の客観解析データ(領域モデルによる)を初期条件として、台風が存在しなかったと仮定した場合と比較することによって、台風に対する前線の影響を調べた。用いたモデルは、オクラホマ大学で開発されたARPSであるが、数値拡散係数をもとのモデルより小さくとる方がよいことが分かった。対流のパラメタリゼーションのスキームとしては、KuoスキームとKain and Fritschのスキームを用いた。どちらのスキームでも、台風に伴う南風が大量の水蒸気を運ぶため、前線に伴う降雨が増加する傾向が見られた。また、これとは別に、既存の他のモデルを用いて、梅雨期に小規模な山岳の風下で形成された降雨帯のシミュレーションを行い、その形成のメカニズムを調べた。 一方、対流をパラメター化しないで陽に扱う細格子非静力学モデルによる数値実験としては、1999年9月24日、豊橋市で台風18号に伴って発生した竜巻のシミュレーションを行った。用いた水平格子間隔は100mで、準定常的なスーパーセルの形成や、その中心部付近で、竜巻に対応する強い渦をシミユレートすることに成功した。今年度はコンピュータのコストは小さくなったが、計算能率はよくなかったので、非静力学モデルに関しては基礎的な研究に重点をおくこととなった。
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