研究概要 |
本研究計画では日高および肥後変成帯等の国内における最高温変成岩分布地域や南極ナピア岩体,スリランカ等の超高温変成岩分布地域で,変成作用および地殻溶融プロセスとレスタイト形成過程との関連について,野外産状,鉱物反応の精密解析,および高温・高圧実験をもとに詳細な解析を行い,真の下部地殻における部分溶融過程の全貌を明らかにすることを目的として,本研究費によるEDS付走査型電子顕微鏡を駆使し研究を行っている. 1. 年度当初は第39次南極観測隊によって得られた東南極ナピア岩体の超高温変成岩類について,詳細かつ精密な地質図を作成した.ここではサフィリン+ザクロ石+石英,斜方輝石+珪線石+石英,大隈石+ザクロ石等の超高温変成岩類が多数分布し,(1)超高温下での交代作用に伴う反応帯,(2)部分溶融によるレスタイト,(3)層状片麻岩中の薄層,などの産状を示すことが明らかになった.各岩石の全岩化学組成と鉱物化学組成は,XRFおよびEDSを用いて解析中である.これには消耗品費を使用し,成果の一部は日本地質学会,極地研究所南極地学シンポジウム等で発表し,学術雑誌に投稿中である. 2. 日高変成帯の野外調査は,変成岩類の分布が卓越する,中部地域を中心に調査し,部分溶融により形成された過アルミナ質トーナル岩中と母岩となる泥質グラニュライトの精密な記載を行った.また,下部地殻における溶融・流動部分をより鮮明にするため,安定同位体測定を準備中である.これには調査・研究旅費を使用した.また,成果の一部は学術誌に公表した. 3. 肥後変成帯,スリランカ,インドにおける既存の岩石試料を再検討し,それぞれ変成プロセスを検討する上で重要な同位体年代決定をマルチアイソトープ系で実施した.また,スリランカでは新たにスピネル+石英共生等を見出し,変成作用の解析を精密化した.成果は日本地質学会で発表し,学術雑誌に投稿中あるいは印刷中である.
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