研究概要 |
本研究では,真の下部地殻における部分溶融過程の全貌を明らかにすることを目的として,変成作用および地殻溶融プロセスとレスタイト形成過程との関連について,野外産状,鉱物反応の精密解析,および高温・高圧実験をもとに詳細な解析を行ってきた. 1.東南極ナピア岩体の超高温変成岩類について,変成作用の精密解析を行った.その結果,1100℃に達する超高温変成過程は,反時計回りのP-T経路であることが明らかとなり,低圧での昇温期変成過程で起こった泥質変成岩および苦鉄質変成岩の部分溶融によって形成されたメルト相とレスタイト相が,それぞれ石英長石質および超苦鉄質グラニュライトの原岩となった.サフィリンを含むアルミナスグラニュライトは,この両者の反応帯で形成された.成果の一部は地球惑星科学合同学会(東京),日本地質学会(名古屋),国際南極地球科学会議(ウェリントン)等で発表し,学術雑誌に5編の論文として公表した. 2.肥後変成帯および黒瀬川帯の野外調査を実施し,苦鉄質・超苦鉄質変成岩類(ザクロ石ム単斜輝石グラニュライト,ザクロ石角閃岩等)の超高温条件に達する変成プロセスを明らかにするとともに,Sm-Nd系の全岩および鉱物アイソクロン法による年代決定に成功した.全岩アイソクロンでは約540Maの年代値を得,国内におけるゴンドワナフラグメントの存在とパンアフリカン変動による変成作用を明確にした.成果の一部は学術誌に公表した. 3.スリランカの野外調査を新たに実施し,同地および関連するインドの既存の試料と併せて,それぞれ変成プロセスを検討する上で重要な同位体年代決定をマルチアイソトープ系で実施した.また,スリランカでは新たに超高温変成条件下でレスタイトとして形成されたサフィリングラニュライトを見出し,変成作用の解析を精密化した.成果は日本地質学会(名古屋)で発表し,学術雑誌で印刷中(3月現在)である.
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