研究概要 |
本研究計画では日高および肥後変成帯等の国内における最高温変成岩分布地域や南極,スリランカ等の超高温変成岩分布地域で,変成作用および地殻溶融プロセスとレスタイト形成過程との関連について,野外産状,鉱物反応の精密解析,および高温・高圧実験をもとに詳細な解析を行い,真の下部地殻における部分溶融過程の全貌を明らかにすることを目的として研究を行った. 国内においては,日高および肥後変性帯と黒瀬川帯に焦点を当て,ザクロ石-斜方輝石グラニュライトや含サフィリングラニュライトなどのレスタイト形成過程を解析して,関連するカコウ岩質岩の形成について検討した.特に肥後変成帯では,地質学的・岩石学的検討から,東アジアにおける広域変成岩分布との関連を検討した.また,黒瀬川帯では,950℃,1000MPaに達する苦鉄質グラニュライトを記載するとともに,同帯では初めてSm-Nd系のアイソクロン年代を得ることに成功し,国内におけるゴンドワナフラグメントおよびパンアフリカン変動の意義を検討した. 南極,スリランカ,インド等のゴンドワナ関連地域では,ナピア岩体・トナー島において世界で最も詳細な太古代変成岩地域の地質学的解析に成功した.また,超高温変成岩を特徴づけるサフィリングラニュライトの形成過程を解析し,部分溶解に伴うレスタイト起源の他に,超高温交代作用等の効果も明らかにした.スリランカでは,低圧超高温変成作用で形成されたスピネル+石英共生を新発見し,Sm-Ndアイソクロン年代と併せて変成プロセスの詳細を明らかにした.さらにインド東ガート帯における部分溶融過程を検討する中で,特殊なマグマ起源のチャルノク岩の存在を明らかにし,新たに得られた同位体年代と併せて形成過程を検討した. これらの成果の一部は,31編の学術論文と国際学会を含む37編の口頭発表として公表された.
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