研究概要 |
本研究では火山岩より分離した斑晶鉱物の単結晶或いは石基の微少量試料からのアルゴンを主とした希ガス脱ガスとその同位体比分析を行うために、温度制御可能なレーザー段階加熱装置が不可欠である.そのために主要な設備品として連続レーザー発信装置を購入した.レーザー発信装置が納入された段階で、既に準備した赤外放射温度計及び関連装置を合わせ用いて、段階加熱による脱ガス実験とアルゴン同位体分析の基礎実験を行った. 火山体の地質層序学が詳細に研究されている代表的火山体から本年度は浅間山,赤城山,三宅島,桜島を選び,それぞれの火山体から歴史上噴火が記録されている溶岩類の採集を行った.薩摩硫黄島へも調査に入ったが,台風接近のため試料採集できなかった.採集した試料を岩石記載学的に検討し,石基と斑晶を分離した. 石基と斑晶の単粒子又は単結晶(大きさは約1ミリ)のレーザー加熱実験を行い,十分に融解する事を確認した.また,一部の粒子について,アルゴン同位体測定を実施した.ガス量が極めて少なく,^<40>Ar/^<36>Ar比の測定誤差は約40%であり,^<38>Ar/^<36>Ar比の誤差は50%を越えた.従って,現在のところ単結晶サイズでのアルゴン同位体異常を正確に識別できなかった.一方,既存の抵抗炉を使った石基濃集バルク試料(約1グラム)のアルゴン測定も実施した.この場合の誤差は1%以下であり,一部の試料に同位体異常を発見した.一つの火山体(桜島)の過去数百年間に噴火した溶岩においても,一様な同位体異常を持つ.それは,当初に期待した大気アルゴン同位体比組成から重い同位体が減る方向に質量分別作用をしている異常であった.既存の質量分析計とガス抽出装置を用いた火山岩の年代学的な研究も同時に実施してきており,その成果の一部は公表されている.
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