研究概要 |
日本のジュラ紀付加体である秩父累帯について,付加体地質の観点から西南日本外帯全域に適用可能なユニット区分を示して,各ユニットごとの復元した海洋プレート層序を比較した.その結果,北部秩父帯の上吉田ユニットと柏木ユニットはそれぞれ南部秩父帯の斗賀野ユニットと三宝山ユニットに,復元した海洋プレート層序の点で相互によく類似することを示すとともに,無視し得ない差異もあることを指摘した.これは,北部秩父帯と南部秩父帯とが,ひとつの沈み込み帯の側方関係で,同一海洋プレートの沈み込みにより形成され,後に両帯が並置して現在の分布を示すようになったことを示している.西南日本内帯のジュラ紀付加体である丹波―美濃―足尾帯は,復元した海洋プレート層序の点で北部秩父帯に似ている.このことは,テレーンの重複に寄与した主要な横ずれ断層は中央構造線ではなく,黒瀬川構造帯であることを示唆している. 本研究では,Matsuoka(1995)が設定したジュラ系〜下部白亜紀の放散虫生層序区分および化石帯境界の数値年代値を用いて,従来の3〜5倍の時間解像度で地質イベントや海洋プレート層序の比較を行った.微化石年代の精度をさらに高めるために,これまで問題点の多かった北米のジュラ系放散虫化石帯区分との対比を試みた.さらに,日本―太平洋で設定した放散虫化石帯がチベット南部のヤールンツァンポー縫合帯,フィリピンの北パラワン地塊,ロシア沿海州の中生代付加体にも適用できることを示した.
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