研究概要 |
ハンモック状斜交層理と呼ばれる特徴的な堆積構造は,世界各地の浅海性の地層に多くみられる.この構造はストーム時の強い波の作用でできると考えられている.この研究の目的は,ハンモック状斜交層理を造波水槽で作り出し,野外観察での構造解析と組み合わせて,この構造の形成過程を明らかにすることである. 本年度の第一の予定は,強力な波を発生させることができる造波水槽をつくることであった.作成した造波水槽は長さ25m,高さ1.2m,幅40cmである.この水槽では水深70cm程度で,水粒子の楕円軌道の底面付近での最大振動流速は約50cm/sである.今後,造波装置の調整と改良でさらに大きな波浪条件を得ることができると思われる.この造波水槽での最大の問題は,発生させた大きな波を水槽末端でどのように消波するかであった.施行錯誤の末,建材の空隙のあるプラスチック消音板を水路末端部10mに傾斜をつけて置くことで,効率よい消波ができることを見いだした.さらに効率よい消波の装置を考案する必要はあるが,来年度の実験は行える状態に達したといえる. 野外観察では,露頭のよい海岸で,ハンモック状斜交層理の接写での連続写真撮影を行い,その写真から葉理1枚1枚をトレースして解析した.その結果,ハンモック斜交層理砂層で沖合泥底堆積物に挟まるものは,平行葉理から波状葉理へと変化するのに対し,外浜の癒着したものでは,侵食面と級化層理を下部にもち,波状葉理から平行葉理へと変化している.この違いは波状葉理の一部がより高領域の水理条件のベッドフォームであるアンティデューンの痕跡を含むことによると思われる.今後,波浪がつくるアンティデューンがどのような堆積構造を示すかを,水槽実験で明らかにすることで,ハンモック状斜交層理の形成過程解明したい.
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