研究概要 |
本年度は、まず、アエンデ隕石薄片試料中の3つの難揮発性包有物(CAI)に対して、二次イオン質量分析計(SIMS)を用いた酸素同位体局所分析をおこなった。分析領域は10ミクロン〜25ミクロン、再現性を含めた分析精度は、酸素17/16比で±3パ-ミル、酸素18/16比で±4パ-ミル(いずれも2σ)である。注目すべき結果として、2つのCAI(タイプAい属する)の内部のみならず、その外側の集積リムと呼ばれる部分から、delta-17,delta-18ともに-30パ-ミルに達する同位体異常を持ったオリビン粒子が見つかったこと、またひとつのCAIのワーク・ロベリング・リムのディオプサイドからは同じく-45パ-ミルに達する同位体異常が見つかったことがあげられる。このような結果は本研究で初めて明らかになったことであり、今後CAIの酸素同位体異常の起源やCAIの成因を考える上で非常に重要な情報である。本年度は、また、SIMS分析用の試料ホルダーを新たに設計、製作した。新ホルダーの使用により、分析能率とともに分析結果の再現性が非常に良くなることが期待される。このホルダーを用いて、さまざまな鉱物(地球の試料)に対して酸素同位体分析をおこない、SIMS分析における鉱物間のマトリックス効果を調べる実験を準備している。隕石試料に関しては、最近極地研究所から南極隕石試料(タイプCV,CM,COの炭素質隕石)の配布を受けたほか、数種類の炭素質隕石を入手した。一部の試料に関しては薄片製作を開始している。来年度以降の研究期間において、これら異なったタイプの隕石、CAIい対して、系統的な分析をおこなっていく予定である。
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