研究概要 |
本年度は、種々のタイプの隕石(タイプCV,CM,COの炭素質隕石が中心)を国立極地研究所等から入手し、それらの中に含まれる難揮発性包有物(CAI)、オリビン(かんらん石)に富む包有物、コンドルール等に対し、走査電子顕微鏡による観察・記載をおこない、それらの酸素同位体組成を二次イオン質量分析計により詳細に調べた。その結果、CV、CM、COタイプの炭素質隕石すべてにオリビンに富む包有物(OI)が多数存在し、それらの酸素17/16、18/16のデルタ値が-40〜-50パーミルに達する大きな酸素同位体異常を持つことを発見した。その結果は最近論文として公表された(Hiyagon and Hashimoto,1999)。今回の発見により、従来CAIに特徴的だと考えられてきた酸素同位体異常が、隕石中により一般的に見られる鉱物であるオリビンにも存在することが明らかになった。このことは、これらの酸素同位体異常が、太陽系外から持ち込まれた酸素16に富む超新星起源の粒子に由来するものではなく、むしろ太陽系起源である可能性を示唆している。今後は、これらOIがどの程度広範に分布しているか、酸素同位体異常を持つ構成物がCAI、OI以外にも存在するのかどうか、CAI.OI、コンドルールなどの間の成因関係がどうなっているのか等について研究を進める必要がある。現在、酸素同位体異常の起源、CAIやOIの起源を明らかにするため、さらに多くの隕石とその構成物に対して分析を準備中である。また、酸素同位体分析と合わせて、マグネシウム同位体測定による個々の鉱物の年代分析などを並行しておこなう試みも開始している。
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