研究概要 |
本研究の目的は隕石中の鉱物1粒1粒の同位体比組成と形態・結晶構造との関係を明らかにすることにより,太陽系外物質(星間物質)を同定することである.その上で,同定した星間物質と太陽系物質の隕石中の分布様式の関係を考察することにより,惑星系の起源論を進展させる.特に,酸素は惑星系の固体物質中に最も多量に存在する元素である.そのため,その同位体比の異常は,物質科学的に惑星系の進化の問題を解明するためのキ-ポイントとなっている.今年度は隕石中の星間塵の形態・分布と同位体異常の関係が明らかにした上で,その隕石中への混入過程,反応過程の決定を試みた.そして原始太陽系星雲の進化における星間物質と太陽系物質との相互作用を吟味した. 本研究は2次イオン質量分析法(SIMS)と同位体顕微鏡による同位体比測定という新しい手法を隕石試料中の同位体比測定に適用した.また,希土類元素をはじめとする微量元素局所分析を,SIMSを用い,行なった.この同位体比および微量成分の局所分布と鉱物の結晶成長に対応する形態的特徴とそれらの隕石中の分布をむすびつけるために,走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を平行して行なった.対象とする隕石は最も始原的な隕石である炭素質隕石を用いた.具体的な研究成果は以下の通り. (1)アレンデやマ-チソン隕石のマトリックス部をまず同位体顕微鏡を用いサーベイし,同位体異常のある部分をチェックした.このとき,同位体異常の観察が比較的容易なO,SiとMgに注目した.同位体異常を胚胎する物質の大きさは1ミクロン以下の粒子であると考えられた.従来のSIMS法ではこのような微小な物質を検出できなかったが,我々により新開発された同位体顕微鏡では十分な感度で検出が可能であった.なぜならば,同位体顕微鏡は広範囲(数百ミクロン)の領域を迅速にミクロン以下の分解能で行えたからである. (2)同位体異常部分をSEMにより詳細な観察を行ない,異常の存在している結晶を同定し,形態を観察した.また,主成分化学組成も同時に決定した.
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