研究概要 |
1.層状ケイ酸塩に富むコンドリュール・リムの成因:始原的コンドライトのコンドリュールの多くは,微細な鉱物粒子(径<10μm)から成る,厚さが50-200μmのリムに覆われている。リムは,コンドリュールが原始星雲中に存在したとき,周りの麈をその表面に付着させてできたと一般的に考えられている。しかし,代表者らは,ヴィガラノCV3隕石の中から,層状ケイ酸塩に富むリムを発見し,リムとそれが囲むコンドリュールの間に大規模な物質の交代,移動,破壊,そして元素の再分配を伴う水質変成作用の証拠を見い出した。このような変成作用は原始星雲中でガスとの反応では起こり得ない。これは,母天体の表層におけるプロセスに一般的に見られるものである。この結果,代表者らは,コンドリュールとそれを囲むリムは,隕石母天体での,衝撃による角礫石化作用によってできたクラスト(岩片)だというモデルを提出した。これは,リムが母天体で形成されたことを示す初めてのモデルである。 2.アエンデCV隕石の衝撃回収実験:炭素質コンドライト(c隕石)の衝撃変成作用を解明する目的で,我々は一連の衝撃回収実験を行っている。今年度は,アエンデCV3隕石の衝撃回収実験を行った。今回の実験の特徴は,試料に二度,同一方向から衝撃圧力(10-20GPa)を加えたことと,さらに試料を高温(300と600℃)に熱して衝撃圧力を加えたことである。このように人工的に衝撃を与えた試料と,天然で衝撃を受けた隕石との詳細な比較を行った。その結果,二度衝撃を与えたアエンデ試料の組織は,天然で衝撃を受けた隕石のものと非常によく似ているのに対し、高温で衝撃を与えた試料の組織は,我々が知るいかなる隕石のものとも異なることがわかった。このことは,天然で衝撃圧を受けたc隕石は,その母天体が比較的低温で複数回の衝撃圧を受けた可能性が高いことを示唆している。
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