上部マントル構成鉱物の超高圧高温下での熱拡散率測定

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09440188
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 桂 智男 岡山大学, 固体地球研究センター, 助教授 (40260666)
• 研究分担者: 神崎 正美 岡山大学, 固体地球研究センター, 助教授 (90234153)
• キーワード: 熱拡散率 / 高圧 / 高温 / かんらん石 / ペリクレース / 非調和性

研究概要

平成9年度はまず、以前測定したペリクレースMgOの熱拡散率のデータを解析し、論文を完成させた(Katsura[1997],Phys.Earth.Planet.Int.)。ペリクレースの熱拡散率kは絶対温度の逆数に対して非常に線形であるので、1/kをa+bT(a,bはフィッティングパラメーター、Tは絶対温度)にフィッティングした。パラメーターbは格子振動の非調和性を表すが、その体積に対する対数微分は9.9となった。これにより、下部マントルでのペリクレスの熱拡散率は5.87x10(-6)m2/sと推定される。
続いて、Mg2SiO4かんらん石(フォルステライト)の熱拡散率を0GPaと6GPaで行った。その圧力依存性は非常に大きく、6GPaで約40%も増加した。また、(Mg0.89Fe0.11)2SiO4かんらん石との比較により、かんらん石の熱拡散率は組成依存性が非常に大きい事が明らかに成った。かんらん石の熱拡散率はペリクレースと異なり、その逆数の絶対温度に対する線形性は非常に悪い。これは、かんらん石の結晶格子がペリクレースよりはるかに複雑なためと考えられる。
このあと現在、測定プログラムと解析プログラムの改定を行っている。以前のプログラムはMS-DOS上で書かれていたが、メモリーに制限があるためデータセットの点数を増やす事ができなかった。また、シングルタスクであるため測定中に解析ができず、無駄な測定を行う事が多々あった。そこで、真のマルチタスクOSであるWindows NT上で動く、測定と解析を一体化したプログラム現在作成中である。

研究成果

• [文献書誌] Katsura,T.: "Thermal diffusivity of periclase at high temperatures and high pressures." Phys.Earth Planet.Int.101. 73-77 (1997)
• [文献書誌] Sato,K., Katsura,T.and Ito,E.: "Phase relations of phlogopite with and without enstatite up to 8 GPa : implication to potassic magmatism and mantle metasomatism." Earth Planet.Sci.Lett.146. 511-526 (1997)
• [文献書誌] Katsura,T., Ueda,A., Ito,E.and Morooka,K.: "Postspinel transition in Fe_2SiO_4" Properties of Earth & Planetary Materials at High Pressure and Temperature,Geophysical Monograph. 101. (1998)
• [文献書誌] Katsura,T., Sato,K.and Ito,E.: "Electrical conductivity measurement of minerals at high pressures and hightemperatures." The Review of High Pressure Science of Technology. (in press). (1998)
• [文献書誌] Ito,E., Kubo,A., Katsura,T., Akaogi,M. and Fujita,T.: "High-pressure transformation of Pyrope (Mg Al_2Si_3O_<12>) in a sintered diamond cubic anvil assembly." Geophys.Res.Lett.(in press). (1998)
• [文献書誌] Irifune,T.et al.: "Postspinel phase boundary in Mg_2SiO_4 determined by in situ X-ray measurement." Science. (in press). (1998)