研究課題/領域番号 |
09440190
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
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研究分担者 |
上田 慎吾 資源環境総合研究所, 大気圏環境保全部, (研究職)通産技官
楊 宗興 東京農工大学, 農学部, 助手 (50260526)
高田 秀重 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70187970)
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キーワード | 化石燃料 / 硫酸イオン / フッ化物イオン(フッ素) / 多環芳香族炭化水素 / 大気降下物 / エアロゾル / 森林生態系 / 北京郊外 |
研究概要 |
中国・北京郊外と日本国・東京郊外の森林集水域および日本海側の松江市内において大気降下物、エアロゾルを採取し、化石燃料の燃焼に由来する微量物質である硫酸イオン、フッ化物イオン、多環芳香族炭化水素(PAH)などを測定し、それらの挙動について考察した。またPAHのなかで硫黄を含むもの(PASH)の測定法を検討した。 北京郊外の森林集水域(Bj)と東京多摩丘陵の森林集水域(Tk)の林外雨中の硫酸イオンの平均濃度は325,39.4μeq/1で、前者で8.2倍大きかった。またフッ化物イオンの平均濃度は9.81,1.18μeq/1で、Bjで8.3倍大きかった。森林集水域における夏季3ヶ月の物質収支を比較すると、Bjでは、フッ素のインプットの約81%は集水域内に蓄積されたが、Tkではほぼ100%が流出した。中国ではエネルギー源の約75%を石炭に依存しており、その燃焼過程によりフッ素は生成される。フッ素は5mg/1以上の濃度で植物に対し有害であると言われ、このままフッ化物イオンの降下が続けば、植物へ直接的な被害を与えることが考えられる。また硫酸イオンの降下が続けば、森林集水域における物質収支のバランスが崩れ、森林、土壌への影響が懸念される。今後の監視が極めて重要であろう。 日本海側の島根県松江市内において風向別に大気エアロゾルを採取し、PAHを測定した結果、採取時の優占風向が日本海側からの場合、PAH濃度は最も低かった。Benzo-(a)pyrene/Benzo(e)-pyreneの値は小さく長距離輸送されていること、またFluoranthene/Pyreneの値は1.0以上で固定発生源の寄与が大きいことが推定された。PASHも検出され、その中で優占したのはPhenanthrothiophene、Benzophenanthrothiopheneなど低分子化合物であった。
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