研究概要 |
以下に、研究実績の概要を箇条書きにする: (1)金属内包フラーレンの高収率生成法の開発:われわれは、金属内包フラーレンを生成するための原材料である金属・炭素混合ロッドに着目した。その結果、金属炭素結合すなわち金属カ-バイド結合をもった混合ロッドをアーク放電すると、通常の混合ロッドの場合と比較して、金属内包フラーレンの生成率が3-6倍に増大することを発見した。Sc2@C84の場合はおよそ10倍の生成効率であった。 (2)金属フラーレンの分離・精製法の確立:本研究では、さらにコストパフォーマンスの良い金属内包フラーレンの分離・精製法の開発に成功した。具体的には、リサイクル機能を有する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と、各種のフラーレン分離専用に新たに開発されたカラム固定相(Buckyclutcher, Buckyprep, 5PYE, PBB)を相補的に使用することにより、高効率の分離・精製が行われた。これにより初年度だけで、Ca, Sr, Baなどの2族の金属内包フラーレンを中心に15種類が新たに分離・単離された。 (3)走査トンネル顕微鏡STM/STSによる構造と電子状態の直接観察: シリコンなどの清浄表面上で金属内包フラーレンをサイズと個数を制御した条件下で整列させ、これらのアッセンブリーをフィールドエミッションあるいはフォトンにより物質変換することは、本プロジェクトの最も大きなテーマである。初年度では、Si(111)7x7清浄表面上にランタン原子内包フラーレン(La@C82)を整列させ、そのSTM像を世界に先駆けて観測することに成功した。また、Si(111)上のLa@C82のSTM/STSの観測にも成功し、クラスターレベルのLa@C82の電子構造はバルク結晶のものと、ほとんど変わりがないことを発見した。
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